抄録
日本の仏像の中でも,ほとけの中の仏たる如来像に焦点をあて,その身体的特徴を分析した.如来の身体は「最上の正
しいさとりにふさわしい器」であり,我々の身体とは異なると位置づけられる.如来像では,浄であることを幼さに通じる身
体的特徴を借りることであらわし,あらゆる煩悩から解脱した成熟した存在であることを,性的要素の希薄さと,幼い身体の特徴とは逆の方向に強調されたかたちにより表象する.筋骨は,厭い離れるべき現実の不浄な身体を連想させる要素として忌避される.現代人には一見貧相にみえるかもしれない如来像の身体は,決して造像者や受容者の身体意識の乏しさを意味せず,むしろ彼らがかたちの持つ意味をいかによく理解し,如来の本質を伝えるかたちを注意深く選び取ったかを示している.