抄録
企業統治に関する従来の国際比較では,日本とドイツは共に「銀行志向型」と位置づけられる.しかし《制度》(企業統治や銀行業務等に係る法的枠組み)と《取引関係》(企業―銀行間の実態的な取引パターン)という2つの側面から国の企業統治を比較すると,同じく「銀行志向型」といっても,日本は《取引関係》に,ドイツは《制度》に,それぞれ依拠しているという違いが見出される.本稿では,一般に《制度》と《取引関係》の間に「代替性」がある場合に,企業統治システムがうまく機能する可能性が高い,という「《制度》と《取引関係》の代替性仮説」が導かれる.