組織科学
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33 巻, 1 号
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特集
  • 奥山 敏雄
    1999 年 33 巻 1 号 p. 4-13
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     成立期の社会学は,各機能領域に分化した全体としての近代社会をどのように理解するかというプロブレマティークの中で組織を理解しようとした.機械,有機体,生命システムという,組織の社会学理論の基礎メタファーは,このプロブレマティークの変容に連動するものと解釈できる.組織理論のメタファー論は理論多元主義を主張するが,近代社会の転換期にある現在プロブレマティークの自覚なしに多元主義を展開するとしたら,組織の何を理解したことになるというのか.
  • 神戸 伸輔
    1999 年 33 巻 1 号 p. 14-23
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     経済学では組織を契約の集まりとみなす.これは経済学が個人主義を方法論として取るからである.ここでの契約の概念は,インセンティブ契約やまた暗黙の契約を含んで考えられる.最近では,契約では細かく行動を定めるのではなく,誰が決めるかを決めたり(不完備契約),あるいは相互関係のルールを決める(ゲーム・プレイング・エージェント)ことも,契約の果たしている役割として注目されてきている.
  • 山岸 俊男
    1999 年 33 巻 1 号 p. 24-34
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     通常は集団との心理的同一化の結果として理解されている日本人の集団主義的な行動傾向か,集団との同一化によってではなく,集団の内部に一般的互酬性が存在することに対する期待によりもたらされていることを示す一連の実験を紹介する.これらの実験の結果は,集団成員からの互酬的な「内集団ひいき」が期待できない状況においては,実験参加者が集団主義的に行動しなくなることを示している.
  • 野中 郁次郎, 遠山 亮子, 紺野 登
    1999 年 33 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     本稿では,「知識」に関連する90年代の経営理論を総括し,組織的知識創造理論の新たな展開を「知識変換プロセス」,「場」,「知識資産」,「リーダーシップ」という鍵概念を使って探ろうとしたものである.企業は共有された文脈である場の有機的な結合により知識変換を行う主体であり,知識変換プロセス,場,そして知識資産の3つの要素に働きかけることにより,効率的,効果的な知識変換を行うことができる.
  • ――非決定論的世界での組織理論に向けて――
    網倉 久永
    1999 年 33 巻 1 号 p. 48-57
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     「機械」のメタファーは組織研究において非常に強い影響力を持ってきた.コンティンジェンシー理論においても,「有機体」のメタファーが提唱されていたが,実際には「機械」メタファーの影響から逃れてはいない.その原因は,テーラーの科学的管理法の時代からコンティンジェンシー理論に至るまで,経営学の目的は経験事象の体系的な観察から実証的に因果関係を確立することであるという「経営学の科学化」志向があり,さらにその背後には決定論的・機械論的な世界観が存在していた.日本における組織研究では,1980年代半ばから「自己言及」という論理タイプか導入され,決定論的世界観と決別しようとする方向性が打ち出されてきたものの,新しい理論構築のための基礎が十分に確立されていないため,現在の組織研究は進むべき方向を見失っている.
自由論題
  • ――《制度》と《取引関係》からの分析――
    田中 一弘, ペーター ブリース
    1999 年 33 巻 1 号 p. 58-68
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     企業統治に関する従来の国際比較では,日本とドイツは共に「銀行志向型」と位置づけられる.しかし《制度》(企業統治や銀行業務等に係る法的枠組み)と《取引関係》(企業―銀行間の実態的な取引パターン)という2つの側面から国の企業統治を比較すると,同じく「銀行志向型」といっても,日本は《取引関係》に,ドイツは《制度》に,それぞれ依拠しているという違いが見出される.本稿では,一般に《制度》と《取引関係》の間に「代替性」がある場合に,企業統治システムがうまく機能する可能性が高い,という「《制度》と《取引関係》の代替性仮説」が導かれる.
  • ――技術研究の前提の再検討――
    加藤 俊彦
    1999 年 33 巻 1 号 p. 69-79
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     技術発展の方向性を規定する要因については,長年にわたり議論が展開されてきた.特に最近では,経営学をはじめとする技術研究で支配的な枠組であった「決定論的視座」に対抗する「非決定論的視座」に基づく議論が,この領域で活発に展開されている.そこで本稿では,議論の前提に遡って技術発展の規定要因に関する既存の文献を整理・検討した上で,「技術システムの構造化理論」という概念枠組を提示する.この概念枠組は,二つの視座を発展的に統合するものである.ただし,ここでの焦点は,決定論的視座を擁護するのではなく,むしろその重大な問題点を明らかにすることに,当てられる.
  • ――キャリア発達の観点から――
    山本 寛
    1999 年 33 巻 1 号 p. 80-96
    発行日: 1999年
    公開日: 2022/07/27
    ジャーナル フリー
     本研究は組織の配置管理と所属組織内での将来の昇進可能性が低下するキャリア・プラトー現象との関係を検討した.大企業10社および所属する課長237名に対する質問紙調査を行った結果,従業員の配置期間をあまり短すぎずまた長すぎない期間(4-5年)に設定している組織で課長のプラトー化が進行していないことが示唆された.しかし,組織のエリート・コースと一致しているかどうかは課長のプラトー化との関連はみられなかった.さらに,現在の部署での配属歴が長い課長や非エリートの課長の場合,プラトー化しているほど職務関与が低く転職意思が高い傾向がみられた.プラトー現象やそれによる影響を検討する上で配置管理の機能がある程度明らかにされたとともに,プラトー現象と配置管理の影響による転職行動を説明する従業員の組織間キャリア発達モデルが提起された.
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