2021 年 12 巻 3 号 p. 11-21
本稿は,2020年から2021年に開催が延期されたオリンピック・パラリンピック夏季大会が終わった後,東京に何が残されるのかを,過去の開催都市の経験をもとに検討する。スポーツメガイベントが開催された後に長期的に残される「レガシー」は,「イベント後に残存する計画的/非計画的,肯定的/否定的,有形/無形の構造」と定義され,短期的「インパクト」と区別される。まず,一般に喧伝される「経済効果」は,インパクトとしてもレガシーとしても期待できないが,このことを観光への影響を例に論証する。次に,都市開発による物理的構造変容は,経済成長を促さないにもかかわらず,都市の脆弱な生活者を疎外し,むしろ富裕層を利するため,社会的格差が拡大することを示す。最後に,J・ボイコフの祝賀資本主義論を参照し,格差を拡大しながら資本蓄積を促す権力構造こそオリンピック・パラリンピックのレガシーであることを示したうえで,同様の傾向が東京でも確実に進行していることを例証する。