2024 年 16 巻 3 号 p. 141-152
本稿の主題は、公立高校通信制課程の生徒の就職が、地域労働市場を構成する諸アクターのどのような実践・相互作用において支えられているのかを明らかにし、高卒新卒採用を記述する新たなモデルについての試論を行うことにある。
高校新卒採用は長らく「実績関係」をベースにした「学校経由の就職」、すなわち、校内選抜に基づいた選抜配分モデルとして理解されてきた。しかし、現在ではこうしたモデルは実効性を失っており、特に通信制高校など十分な資源を持たない高校からの就職について新たなモデルを検討する必要がある。本稿では、地域労働市場を構成する諸アクターへの聞き取りを通じて、それぞれのアクターがいかなるやり方で高校新卒者の就職を支えているのかについて検討した。結論部において、旧来型の選抜モデルとは異なる「アセットの贈与交換モデル」の構築の可能性について提示した。