2026 年 17 巻 3 号 p. 79-90
本稿は、「責任」観念の役割を踏まえた貧困対策の規範的目標を提示することを目的とする。哲学的/規範的観点から、貧困対策に関する議論における責任の扱い方を考察し、貧困対策における個人と社会との適切な責任分担を示す。〈原因帰属としての責任〉と〈問題対処の引き受けとしての責任〉を区分する理解を提案することで、貧困の自己責任論の問題点を明らかにする。さらに、これら二つの責任の区分に依拠して、問題対処の引き受けとしての責任を個人と社会がどのように分担すべきかを直接に規範的に問うという戦略が、社会による貧困への対処を考える際に有効であると指摘する。そして、自己決定の困難こそが貧困の問題性であるとする立場をとる。この立場に基づき、価値ある選択肢を全ての人に保障する社会構造の構築という社会による問題対処を前提に、個々人がそうした社会構造の維持に貢献するという責任分担が、貧困対策の規範的目標になると論じる。