社会政策
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小特集■同一価値労働同一賃金研究の新地平
職務分析の実際と「同一価値労働同一賃金」職務評価の試み
―中小企業のあるスポーツ関連会社の事例―
大澤 卓子
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2017 年 9 巻 1 号 p. 80-97

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抄録

 職務評価は,「同一価値労働同一賃金」を達成するのに欠かせないものである。しかしながら,日本において一般的に職務評価の実行は困難であると考えられていたため,職務評価の事例報告は少なかった。そこで本稿では2つのテーマを報告する。第1のテーマは,日本のビジネス界で実際に実施されている職務分析の実態である。第2のテーマは,「同一価値労働同一賃金」にもとづく職務評価を試行した結果である。まず,中小企業のあるスポーツ関連会社を事例として,職務分析の詳細な手順を報告する。なお,この事例は2つの特徴を持っている。1つは,この事例の会社は,中小企業としては珍しく,研究開発,生産,マーケティング,そして物流といった多数の部門を持つことである。2つ目は,この事例は,ブルーカラー正社員とホワイトカラー正社員の全員の職務について職務分析を実施していることにある。次に,「同一価値労働同一賃金」にもとづく職務評価を試行した結果を報告する。この事例で扱う会社は,職務評価の実施に加えて,現在,新しい人事評価制度も開発しているところだ。開発の過程で明らかになったことは,管理者も部下もともに,すべての従業員が同じ人事評価基準を使うことに疑問を持つことである。そこで私は,「同一価値労働同一賃金」にもとづく職務評価を試みに実施した。その理由は,この職務評価の結果が,人事評価の基準または制度の改善に役立つかもしれないと考えたことにある。

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