抄録
ソフトウェア開発プロジェクトにおいて, プロジェクトの状態を的確に観測し, 品質と納期を守るためにプロジェクトの抱える潜在的なリスクを事前に認識し, リスクを回避するために必要なアクションプランを講ずるリスクマネージメントが重要である. しかしながら, プロジェクトチームで解決できない対策が必要になる場合があり, 第3者から見ても, 的確にプロジェクトのリスク状態が観測できる仕組みが組織に組み込まれていることが重要である. 従来, プロジェクトチームの問題は, プロジェクトリーダ等の申告によって発見, 認識される場合が多く, この場合, 発見遅れや解決のための稼働や期間が増加するケースが多いはかりでなく, 納期延伸等システム開発のスケジュール変更など致命的な問題に発展する危険性が高い. 本稿では, プロジェクトのリスク状態を定期的に診断しこの結果を定量的にリスク値として表し, プロジェクトの状態の判断やアクションプランへの活用することを目的とした簡易なリスク評価方法を提案する. 本リスク評価方法は複数のプロジェクト間でリスク値を比較, 傾向分析する事によってプロジェクトマネージメント上の共通課題の発見や対処に対し有効となる. この方法を試行適用した結果として, プロジェクト管理の共通課題の対策など組織的なプロジェクト管理のPDCAを廻す事に有であることを述べる.