抄録
透過力が低い軟X線も、試料表面から数 100 nm 程度の侵入長を持っていることから、測定系を工夫することで、表面からバルクまでの電子状態や化学状態を深さ方向に分析できる。本課題では、軟X線励起により生じる蛍光X線の放出角度分布が、X線吸収が生じた深さに依存することを利用した、蛍光法による深さ分解軟X線吸収分光法の試験測定を実施した。軟X線用背面照射型 CCD 検出器を利用した測定装置を BL27SU に試作し、20 nm 厚の SiO2 層と Si 層が交互に積層された標準試料に本手法を適用した。その結果、深さ分解軟X線吸収分光測定によって、化学状態の深さ依存性を観察することに成功した。一方で、検出器の配置上の問題や、本手法を構造が未知の試料に展開するためには、自己吸収などの影響も加味した解析方法の開発が必要であることなど、今後の課題も確認された。