SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
10 巻, 2 号
SPring-8 Document D 2022-005
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
Section A
  • 水牧 仁一朗
    2022 年 10 巻 2 号 p. 106-107
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     重い電子系化合物 YbRh2Si2 の単結晶試料について高分解能コンプトン散乱測定を T=300K と T=15K にて行った。面内方位による運動量密度分布の温度変化の違いを期待したが観測することができなかった。それは、微小な変化を捉えきるほどの統計を稼ぐことができなかったこと、あるいは、変化そのものがないことが理由として考えられる。
  • 梅名 泰史, 川上 恵典, 沈 建仁, 神谷 信夫
    2022 年 10 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     光合成における水分解反応を行う光化学系 II 蛋白質 (PSII) の反応機構の学理解明には、高分解能な結晶構造が不可欠である。本研究は、調湿ガスを使った脱水処理による PSII 結晶の改良を目指した。その結果、PSII 結晶は結晶格子が収縮し、それに伴って回折能が改善することが確認された。しかし、処理に時間を要することや収縮過程の再現性が難しいことなどの課題によって目標は達成されなかった。ただし、脱水収縮による改良の有益な情報は得られた。
  • 宋 哲昊, 伊藤 仁彦, 平岡 望, 久保 佳実
    2022 年 10 巻 2 号 p. 113-116
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     Li 空気2次電池(LAB: Lithium-Air Battery)の大容量放電後の正極に対して、正反応生成物である Li2O2 を O K-edge NIXS (NIXS: Nonresonant Inelastic X-ray Scattering) を用いて検知できることを初めて示した。一方、硬X線プローブ光によるダメージ抑制のため、X線ドーズ量は 1016 photons/mm2 台に抑えることが必要であることもわかった。LAB の放電反応で生成された Li2O2 以外の化学状態の検知も可能で、本手法は大容量放電の終盤、もしくは引き続く充電初期の正極反応生成物の in-situ 分析に適用しうると考えられる。
  • 西山 宣正, Eleonora Kulik
    2022 年 10 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     MgSiO3 組成の高圧相であるアキモトアイトおよびブリッジマナイトの破断面および研磨面の軟X線吸収分光測定を全電子収量法および部分蛍光収量法で実施した。ブリッジマナイトにおいては破断面および研磨面の表面で酸素4配位シリコンの低圧相への逆相変態が起こっているが、アキモトアイトの破断面においては、このような相変態は起こっていなかった。このことはブリッジマナイトが破壊誘起アモルファス化によって高靭化する割れにくいセラミックス材料である可能性を示唆している。
  • 大藤 弘明, 小島 洋平
    2022 年 10 巻 2 号 p. 121-123
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルと水素を含まない出発物質(テトラシアノエチレン、C6N4)を用いて、50 GPa 超の圧力領域で加熱を行うことにより、新たな立方晶の窒化炭素相を合成することに成功した。合成された立方晶窒化炭素は、常温常圧に減圧回収が可能であり、大気圧下では a = 3.5124(2) Å の格子定数を有することが分かった。回折パターンの類似性から同相はダイヤモンドに近い結晶構造を持つと考えられ、またダイヤモンドに匹敵する極めて高い体積弾性率を有することが明らかとなった。
  • 野尻 浩之, 松澤 智
    2022 年 10 巻 2 号 p. 124-126
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     磁場誘起スピンクロスオーバー転移を起こす Mn(taa) について、強磁場印可による XMCD により、磁化成分の分離を試みた。転移磁場に相当する磁場以上で、XMCD 信号の増加が見られ、XMCD により磁場誘起のスピン状態の変化が誘起されることを示す結果を得た。一方、零磁場における XAS の温度変化では、スピン状態の変化に伴うスペクトル変化が明確に確認されたが、経時変化も生じており、照射による変化が生じないようにX線強度の制御が必要である。
  • 鶴田 一樹, 為則 雄祐
    2022 年 10 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     透過力が低い軟X線も、試料表面から数 100 nm 程度の侵入長を持っていることから、測定系を工夫することで、表面からバルクまでの電子状態や化学状態を深さ方向に分析できる。本課題では、軟X線励起により生じる蛍光X線の放出角度分布が、X線吸収が生じた深さに依存することを利用した、蛍光法による深さ分解軟X線吸収分光法の試験測定を実施した。軟X線用背面照射型 CCD 検出器を利用した測定装置を BL27SU に試作し、20 nm 厚の SiO2 層と Si 層が交互に積層された標準試料に本手法を適用した。その結果、深さ分解軟X線吸収分光測定によって、化学状態の深さ依存性を観察することに成功した。一方で、検出器の配置上の問題や、本手法を構造が未知の試料に展開するためには、自己吸収などの影響も加味した解析方法の開発が必要であることなど、今後の課題も確認された。
  • 森脇 太郎
    2022 年 10 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     BL43IR 赤外物性ビームラインにおいて、赤外光音響検出器を導入し、赤外分光光度計試料室内と赤外顕微鏡下のそれぞれの位置で、赤外放射光と熱輻射光での分光スペクトルを比較検討した。試料室内では集光サイズが大きく、赤外放射光の高輝度優位性を活用できていないと考えられ、熱輻射光のほうが S/N 比が高く、有意なスペクトルが得られた。顕微鏡下での測定では、顕微鏡光学系によるスループットの制限によって、どちらの光でも信号強度が低く、有意なスペクトルが得られなかった。今後の展開として、サンプリング周波数を低くして、信号強度を高くする方法について検討した。
  • 降幡 順子, 神野 恵, 石田 由紀子, 岩戸 晶子, 清野 陽一, 丹羽 崇史, 伊奈 稔哲, 宇留賀 朋也
    2022 年 10 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     7・8世紀の瓦資料を測定対象として、焼成時の酸化還元の影響に関する情報を得るため XAFS 測定を行った。資料は軟質胎土で、胎土色は、白色・灰白色・黄白色・赤褐色と幅広く、特に灰白色・黄白色胎土は、鉄含有量との相関が明確ではない。これまで奈良三彩を主対象とした胎土色と XANES スペクトルの比較を試みたが、胎土色や鉄含有量に関係なく類似するスペクトルが得られ、焼成条件に関わる酸化還元状態については、赤褐色胎土でその傾向を僅かに示すにとどまった[1]。今回調査する7世紀藤原宮出土瓦資料の XANES スペクトルは、奈良三彩と比較するとスペクトル形状に異なるものがあり、胎土色・鉄含有量との相関が得られるのではないかと考え実験を行った。その結果、プレエッジピークの相違から3群に大別でき、それらの胎土色と鉄の価数には相関があることがわかった。さらに例外的な資料が集中する範囲設定の方針が見えてきた。
  • 帯田 孝之, 三輪 康平, 水口 峰之
    2022 年 10 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     基本転写因子は遺伝子発現を制御し、幅広い種で保存されている。本研究では、古細菌の基本転写因子の一つである TFE の結晶構造を、1.42 オングストロームの分解能で決定した。古細菌 TFE とそのヒトオルソログを比較した結果、ウイングドヘリックスドメイン、ジンクフィンガードメインの立体構造が高く保存されているが、両者をつなぐコイルドコイルドメインの構造が大きく異なることが明らかとなった。
  • 万 為衆, 宮口 侑生, 野尻 正樹
    2022 年 10 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     最近、主に脊椎動物の血液中で酸素運搬として機能するヘモグロビンが、ハプトグロビン等と結合するとペルオキシダーゼ活性などの酵素活性を示す報告がなされている。しかし、古くから研究されているヘム酵素機構(高原子価鉄オキソ錯体の生成と触媒活性発現)から、ヘモグロビン本来の立体構造のままではそれは難しいと考えられる。本研究では、そういったヘモグロビンにおける酵素様活性発現時ならびに電子伝達時の構造的基盤の解明を目指し、ヘモグロビンの構造遷移を誘発するアロステリックエフェクター分子の有無での予備的な速度論的ならびに構造解析を行った。
  • 登阪 雅聡
    2022 年 10 巻 2 号 p. 153-156
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     架橋密度の低い天然ゴム(NR)を素早く高延伸すると、安定な伸長誘起結晶が形成され、張力から解放されても伸びが維持された「形状記憶状態」となる場合がある。X線解析により、形状記憶NRの結晶部分は、通常の NR とさほど変わらないことが示された。一方、形状記憶 NR の融解挙動からは、伸びた非晶鎖の収縮力が伸長誘起結晶の融点を低下させることが示唆された。この考えに基づいて、形状記憶 NR の融解の自由エネルギー変化を定式化した。この定式化に用いた因子の関係を実験結果と比較した。実験で得られた結晶化度と他の因子を用いて計算した結晶化度の間には相関関係が見られた。
  • 清都 晋吾, 今井 友也, 杉山 淳司
    2022 年 10 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
    ミクロフィブリル傾角(MFA)は、木材の物性および乾燥時の収縮挙動と高い相関がある。テーダマツ圧縮あて材およびオポジット材について、乾燥に伴う MFA の変化を小角X線散乱によって、木材の収縮挙動をカメラによってそれぞれ測定した。圧縮あて材においては相対湿度の減少に伴って MFA が増加した。試料は乾燥により年輪接線、樹木長軸両方向に収縮した。オポジット材においては、相対湿度の減少に伴って MFA も減少した。また、試料は乾燥に伴い接線方向に材が収縮し、樹木長軸方向にはほぼ収縮しなかった。
  • 前里 光彦, Andhika Kiswandhi, 岡村 英一
    2022 年 10 巻 2 号 p. 164-167
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     有機導体 (ET)Ag4(CN)5 は、+1価の ET ラジカル分子がダイヤモンド格子を形成し、ハーフフィールドバンドを持つことから、3次元 Dirac 半金属の候補物質と考えられるが、常圧下では強い電子相関によって電荷が各 ET サイトに局在した Mott 絶縁体となっている。本物質に超高圧を印加することにより、Mott 絶縁体から3次元 Dirac 半金属への相転移が期待されるため、ダイヤモンドアンビルセルを用いた超高圧下での中赤外領域の反射スペクトル測定を行い、分光学的な観点から超高圧下における電子状態変化の観測を試みた。
  • 新田 清文, 関澤 央輝
    2022 年 10 巻 2 号 p. 168-170
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     X線 CT(XAFS) 法は現在多くの場合透過法でのみ活用されており、低濃度元素の分析には適用不可である。本課題は蛍光X線を利用した CT 法である走査型蛍光 CT 法を利用して複数元素の検出及び分布を得ることができるのかの検証を行った。本報告では実際の計測で得られた結果と今後の課題について報告する。
  • 茂筑 高士, 星川 晃範, 八久保 晶弘, 勝矢 良雄, 田中 雅彦, 小西 繁輝, 坂田 修身
    2022 年 10 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     硫化水素ハイドレートは、水分子が作るカゴ構造に、ゲスト分子として硫化水素を内包した化合物である。硫化水素は極性が強いことから、水分子との相互作用により、カゴ構造内のゲスト分子の偏心が期待される。その詳細を調べるために結晶構造解析が必要となるが、非常に毒性が高いため、分解して硫化水素が発生した場合を考慮すると、実験室系X線回折装置を使うことは不可能である。今回 BL15XU の高分解能粉末X線回折装置を用いて微量の試料の測定を行い、結晶構造の解析を行った。その結果、硫黄原子は、水分子が作るカゴ構造の中心付近に位置しているが、若干の偏心が示唆された。
Section B
  • 篠田 弘造, Balachandran Jeyadevan, 佐藤 王高
    2022 年 10 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     触媒として製品化されている Pt-Pd 系合金も、さらなる白金族元素の使用量抑制が求められる。本実験では、X線吸収分光を適用して触媒機能に関係する Pt、Pd の化学状態を調べ、従来の大気中加熱という前処理を還元雰囲気である CO ガス中で実施した場合、および活性向上を目指した第三元素添加の効果を調査した。結果、Co 添加の効果については検討の余地があるものの、還元雰囲気中処理により大気中処理とは異なる化学状態となること、合成にポリオールプロセスを適用することにより加熱前処理不要となることを見出した。
  • 木崎 彰久, 平野 伸夫, 中村 勤, 波津久 達也
    2022 年 10 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     バイナリー式温泉発電所の熱水輸送配管において、配管内に付着する温泉スケールへの対策が求められている。本研究では、温泉スケールを効率的に除去するための知見を得ることを目的として、温泉スケールの三次元構造についてのX線 CT 観察を実施した。実験観察の結果、温泉スケールの結晶は時間経過とともに析出が進行していることが示唆され、温泉スケールをより効率良く除去するためには、できる限り早期の段階で速やかに除去することが有利であると考えられた。
  • 横溝 臣智, 若林 琢巳, 中山 武典
    2022 年 10 巻 2 号 p. 186-193
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     耐候性鋼の保護性さび層の生成・保護過程における状態変化を追跡するため、湿潤状態からの乾燥過程についてX線吸収微細構造法(XAFS)を用いて評価を行った。その結果、湿潤状態では Fe の平均価数が低下している可能性が示唆された。
  • 原田 雅史, 中村 浩, 平野 明良, 井上 慎介
    2022 年 10 巻 2 号 p. 194-200
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     ポリ(4-スチレンスルホン酸)PSS をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)PEDOT(以下 PEDOT:PSS)は、大気中の水分を効率的に吸放湿する。小角X線散乱と原子間力顕微鏡により、PEDOT:PSSのフィルムは PEDOT からなる数 nm の微結晶と PSS からなる物理ゲルで構成され、数十 nm の濃度揺らぎをもつことがわかった。また、動的粘弾性とパルス NMR で PEDOT:PSS のダイナミクスを解析した結果、PEDOT と PSS の力学特性は PEDOT と PSS の混合比率によって変化し、含まれている水は数 nm 以下のクラスタを形成していることが示唆された。
  • 弓削 亮太, 深津 公良, 宮崎 孝
    2022 年 10 巻 2 号 p. 201-204
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では、放射光による小角X線散乱法(SAXS)と極小角X線散乱法(USAXS)を組み合わせて、カーボンナノブラシ(CNB)とカーボンナノホーン集合体(CNHs)の構造解析を行った。その結果、CNB は、平均構造として二次構造が長さ数 µm、直径が数 10 nm の針状の集合体で、一次構造(一本の CNH)は、直径が数 nm であった。SAXS/USAXS 結果から得られた二次構造の長さは、走査型電子顕微鏡等で観察されたものより短いため、針状に伸びているというより、液中で湾曲して分散している可能性がある。また、一次構造は、従来から得られている局所構造観察から予想されるバルク構造とおおよそ一致していた。CNHs の二次構造は、単純な球状集合体というよりは楕円体のような構造であることが分かった。
  • 鷺谷 智, 城出 健佑, 西川 由真, 中村 亮太
    2022 年 10 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     タイヤ用ゴム組成物は複合材料であり、構成する材料の内訳によって、破壊特性の一つである耐亀裂性が大きく異なる。その要因を理解することを目的に、X線イメージング法を用いてゴムの引裂試験における変形を直接観察した。得られた透過像に対しデジタル画像相関法(DIC)を適用することで歪み分布を算出し、亀裂周辺の局所変形を含めた詳細な解析が可能となった。解析の結果、亀裂先端には歪みが集中しており、歪み集中の度合いは印加歪みに大きく依存していることがわかった。
  • 人見 尚
    2022 年 10 巻 2 号 p. 211-214
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     コンクリートの結合材であるセメントは、水と混錬することで硬化し、様々なカルシウム水和鉱物を生成する。これらの鉱物の多くが可溶性で、セメント硬化体は地下水や雨水に触れた場合徐々に耐久性を失うと考えられる。含有鉱物の粒径は数マイクロメートルであり劣化の予測には、試料の鉱物の有無を含めた含有率とその形状を初期の硬化時や劣化における経時変化を時分割で知ることが重要である。これらの測定のため、単色光を用いたX線 CT とX線回折の連成観察手法の開発に取り組み、セメント硬化体の供試体の CT による内部構造と構成鉱物の同定が可能な回折プロファイルの取得を実現した。
  • 米村 光治, 山口 樹, 山村 実早保, 豊川 秀訓, 佐治 超爾, 齋藤 寛之
    2022 年 10 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     鉄鋼材料の圧縮過程のその場観測技術の確立を目的として、高エネルギー放射光を用いて SUS304 ステンレス鋼の冷間圧縮過程をその場観測し、加工誘起マルテンサイト( α´ )変態過程の中間相である ε 相について興味深い結果を得た。二次元検出器で観測すると、圧縮開始直後から ε 相は形成される。そして ε 相の増大に追随するように α´ 相が増大する。つまり、SUS304 の圧縮加工誘起の α´ 変態のシーケンスは、γ 相から中間相の ε 相を経由して α´ 相への変態である。20% 圧縮を超えると γ 相から ε 相への変態より、ε 相から α´ 相への変態が主体となり、ε 相が減少する。ε 相は、水素によるステンレス鋼の脆化の機構解明や相変態挙動で注目されており、本成果は水素環境中で使用する材料提案や材料開発につながると期待する。
  • 徳田 一弥, 黒松 博之, 北原 周, 山田 周吾
    2022 年 10 巻 2 号 p. 220-224
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     高エネルギー対応二次元検出器である PILATUS 300K (CdTe 素子)の性能評価を行った。標準試料を用いた比較から、70 keV で Si 素子の約 30 倍の感度利得があることが明らかになった。また、適切な一次光減衰フィルタを入れることで、高次光を活用して 70 keV より高い領域も測定できることも確認できた。一方で高エネルギーになるほど感度補正が不正確になるため、微量相の検出など高精度な測定が必要な場合は、その条件に合わせた補正データを取得する必要がある。
  • 川田 浩史, 黒田 孝亮, 李 柔信, 池内 一成, 夏井 竜一, 日比野 光宏, 名倉 健祐, 黒岡 和巳, 吉川 住和
    2022 年 10 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 2022/04/28
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル オープンアクセス
     リチウムイオン電池正極材料として期待される Mn、Co、Ni 含有 O2 構造材料をモデル物質として、ヨウ化リチウム(LiI)を用いて空孔サイトへの化学的 Li インターカレーションを実施した。K 吸収端エネルギーの変化から、遷移金属のうち Co のみが電荷補償のために還元されることがわかった。また組成分析から酸素が取り込まれる反応の進行も示唆された。充放電試験から、LiI 処理による容量増大の一方で、ex situ XAFS 測定から容量増大に相当する遷移金属価数変化の差は認められなかった。
Section C
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