抄録
コンクリートは、主として水に接することで端部から劣化を生じる。劣化の形態は様々で、構成材の溶出や下水道などに含まれる硫酸イオンの外部からの侵食などが挙げられる。しかしいずれの劣化範囲も表面から数十年で数十 mm 程度の範囲であり、実験で再現可能な劣化深さは数 mm 程度に限られる。これら劣化現象の詳細な観察には、マイクロメートル単位での非破壊測定法が必要となる。劣化に伴う構成鉱物の変化の空間的、結晶学的に把握には、BL28B2 に設置の白色X線を用いた CT と、マイクロビームによるエネルギー分散型の局所X線回折 (XRD)が有用と考えられる。ただし XRD は、測定範囲が 0.2 mm 程度であり、CT の分解能に比べ大きな範囲であること、試料を摩砕せず有姿の状態での観察のためピークの欠落が生じること、観察点に到達する前後でX線マイクロビームが試料を通過することで低エネルギー領域のX線が供試体に吸収されてしまうなど、通常の角度分散型の XRD にはない課題を有しており、特に鉱物混合状態での鉱物同定は困難である場合が多い。現在これらの課題への対応方法を見出し、回折プロファイルのフィッティング方法を確立し、鉱物同定の高度化を目指している。本実験では、特に、観察範囲の大きさの観察位置へのその周辺からの影響および有姿試料の観察によるピークの欠落に注目し、高純度の試薬とその粒度を変えた観察を行い、回折プロファイルへの影響として、バックグラウンドの影響は低いものの、回折プロファイルの複雑な鉱物の判定にはさらに検討を要することを把握した。