SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
10 巻, 3 号
SPring-8 Document D 2022-010
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
Section A
Section B
  • 今田 真, 寺嶋 健成, 伊佐治 辰昭, 加田 大昌, 藤田 茜, 嶋 敏之
    2022 年 10 巻 3 号 p. 290-292
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     Dy-Fe-B 薄膜の電子状態を解明するために硬X線光電子分光(HAXPES)を行った。キャップ層が Mo 層 3 nm であるとき、その下の Dy-Fe-B 層は酸化されていないことが、Fe 2p XPS から示唆された。Dy 4f 電子が受ける結晶場を反映してDy 3d XPSの多重項構造の強度比が偏光依存性を示すと考えて、その検出を試みたが有意な偏光依存性は観測されなかった。
  • 長谷川 和彦, 高橋 武彦, 大徳 忠史
    2022 年 10 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     従来の熱分解反応に関する研究で用いられてきた熱重量測定や示差熱分析等では、時間と共に生じる化学反応の変化を評価することが困難であった。そこで本研究では、木質ペレット内部の熱分解反応機構の解明を目的とし、熱分解中の木質ペレットに対し質量およびX線透過光強度の同時計測を行い、平均質量吸収係数の導出を行った。また、木質ペレットの熱分解ガスを推定するためにガスクロマトグラフィーによる元素分析を行った。平均質量吸収係数は、650 K 付近でピークをもつことが確認された。本研究の手法を用いることで、木質ペレット内部で生じる熱分解反応を定性的に評価することを可能にした。今後、組成が既知の試料に対して同様の手法を用いることで、反応を定量的に評価することが可能であると考えられる。
  • 土井 修一, 山崎 貴司, 安岡 茂和, 梶原 剛史, 夘野木 昇平
    2022 年 10 巻 3 号 p. 301-304
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     正極活物質に大気中の酸素を用いる次世代二次電池「水素/空気二次電池」において、ガス拡散電極(空気極)は、酸素を還元・発生させる役割を担うため、水素/空気二次電池の特性に大きな影響を与える。本課題では、前課題に引き続きエネルギー可変な放射光X線特有の特徴を生かし、放射光X線 CT を利用して空気極内部のアルカリ電解液を可視化する技術の開発を行った。アルカリ電解液として水酸化セシウム水溶液を用いてセシウムの K 吸収端(E = 36 keV)近傍で入射X線エネルギーを微調整することにより、空気極内部のアルカリ電解液、空隙、空気極、及び触媒の凝集体を区別して観察することができるようになった。
  • 岩間 立洋, 廣澤 和, 坂本 直紀
    2022 年 10 巻 3 号 p. 305-308
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     銅アンモニアセルロース溶液の非溶媒誘起相分離における構造形成過程を in-situ Ultra Small Angle X-ray Scattering (USAXS) で追跡した。原液を凝固液浸漬後まず超小角領域において散乱強度が増加し、その後、ある誘導時間経過後に約 10 nm の相分離構造が形成されることが明らかになった。浸漬時間 60 秒において超小角領域に散乱ショルダーが観察され、その構造サイズは約 270 nm であることがわかった。その散乱ショルダーは経時的に不明瞭になりべき乗の散乱へと変化した。超小角領域に観察された構造は初期構造が数 100 nm であり、経時的に成長する可能性が示唆された。
  • 人見 尚
    2022 年 10 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     コンクリートは、主として水に接することで端部から劣化を生じる。劣化の形態は様々で、構成材の溶出や下水道などに含まれる硫酸イオンの外部からの侵食などが挙げられる。しかしいずれの劣化範囲も表面から数十年で数十 mm 程度の範囲であり、実験で再現可能な劣化深さは数 mm 程度に限られる。これら劣化現象の詳細な観察には、マイクロメートル単位での非破壊測定法が必要となる。劣化に伴う構成鉱物の変化の空間的、結晶学的に把握には、BL28B2 に設置の白色X線を用いた CT と、マイクロビームによるエネルギー分散型の局所X線回折 (XRD)が有用と考えられる。ただし XRD は、測定範囲が 0.2 mm 程度であり、CT の分解能に比べ大きな範囲であること、試料を摩砕せず有姿の状態での観察のためピークの欠落が生じること、観察点に到達する前後でX線マイクロビームが試料を通過することで低エネルギー領域のX線が供試体に吸収されてしまうなど、通常の角度分散型の XRD にはない課題を有しており、特に鉱物混合状態での鉱物同定は困難である場合が多い。現在これらの課題への対応方法を見出し、回折プロファイルのフィッティング方法を確立し、鉱物同定の高度化を目指している。本実験では、特に、観察範囲の大きさの観察位置へのその周辺からの影響および有姿試料の観察によるピークの欠落に注目し、高純度の試薬とその粒度を変えた観察を行い、回折プロファイルへの影響として、バックグラウンドの影響は低いものの、回折プロファイルの複雑な鉱物の判定にはさらに検討を要することを把握した。
  • 前川 修也, 大友 亮介, 北原 周, 森 拓弥
    2022 年 10 巻 3 号 p. 315-323
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     マイクロビームの2次元走査とエネルギー走査して得られるイメージングX線吸収微細構造(XAFS)によって、鋼板上に形成した熱酸化皮膜を測定した。高張力鋼板をはじめとする Si 添加鋼にて生じる、水蒸気含有雰囲気中の高温酸化皮膜の加速成長機構について、その過程で生成する酸化皮膜の構造を明らかにするため XAFS マッピングによってボイド周辺の酸化状態の解析を試みた。水蒸気含有雰囲気中で酸化処理した試料では、酸化皮膜にみられる表面側の Fe 酸化数の増加に加え、酸化皮膜内のボイド周辺が高次の酸化物となった。また、水蒸気含有雰囲気中で生成した酸化皮膜では FeO の存在比率が高くなった。
  • 新井 龍志
    2022 年 10 巻 3 号 p. 324-328
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     硬X線光電子分光法 (HArd X-ray PhotoElectron Spectroscopy : HAXPES)では、光電子放出に伴う材料表面の帯電により、光電子スペクトルのピークシフトやブロードニングが発生し、測定精度が低下する課題がある。帯電の緩和には、試料の接地や低エネルギーの電子線照射による電子の補償または入射X線強度の低減による光電子放出量の抑制などの対策が必要である。今回、帯電緩和を目的として、BL16XU の HAXPES 装置にX線シャッターを設置した。SiO2/Si 基板および SnO2 粉体で検証した結果、帯電緩和効果があることを明らかにした。特に、SnO2 粉体ではアッテネータよりも帯電緩和効果が大きかった。
Section C
Section SACLA
  • Jaewon Choi, Karin von Arx, Satoshi Matsuzawa, Niels B. Christensen, H ...
    2022 年 10 巻 3 号 p. 332-335
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
     Relentless effort for three decades to uncover the mechanism of high-temperature superconductivity has passed. Progress has, to a large degree, been held back by the difficulty to probe the low-temperature normal state. This non-superconducting ground state is believed to hold the key to this longstanding enigma. Here, we reported x-ray diffraction experiments performed at SACLA free-electron laser under pulsed magnetic fields capable of reaching the normal state. For the primary purpose, our measurements were designed to search for field-induced charge ordering in prototypical cuprate material La2-xSrxCuO4 (x = 12 and 14.5 %). However, due to large background scattering, we were unable to successfully resolve the intensity from the charge order reflections. Instead, we observed a magnetostriction effect Δc/c as large as 10-5 which increases linearly proportional to H 2. This observation calls for further lab-based magnetostriction measurement as the c-axis lattice parameter may be an important tuning parameter for superconducting transition temperature Tc, via orbital distillation scenario.
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