抄録
銅および銅合金は電気特性と強度特性のバランスに優れ、電線用導体や端子材として最適な材料である。その更なる高強度化のためには、加工変形における原子レベルの構造変化の理解が不可欠となる。その分析手段としては、近年提唱されている引張その場X線回折 (以下、XRD) が有望である。前回課題では、実用的な銅合金の板材 (厚み 0.3 mm) の引張変形前および変形開始直後に、粗大粒の影響でフィッティング値が不規則に変動する問題が判明した。このため本課題では、粗大粒影響低減に向けた試料揺動の効果検証を行った。結果として、揺動で不規則変動が改善傾向に向かうことを確認したが、揺動条件の不十分さにより短周期の変動が見られることが明らかになった。