抄録
車載用リチウムイオン二次電池(LIB)のサイクル時の劣化要因として、高い電流レートにおける電池内部の温度上昇、リチウムイオンの正負極間移動にともなう電極の膨張・収縮による応力などが指摘されている。そこで、18650 型 LIB 内部における温度・応力分布を同時に評価した。電流:1C での充電時、リチウムイオンの挿入により負極が膨張するため、負極の集電体である Cu は半径方向に圧縮応力が発生する。表面から 2 mm における充電時の半径方向の応力は 88 MPa 減少した(圧縮)。一方、放電時において応力は 98 MPa 増加し可逆的な変化を示した。高レートな 4C のサイクル充放電により内部温度は表面より10℃ も高い 60℃ 程度まで上昇する現象が確認できた。さらに、表面から 6 mm における Cu に応力が発生しない現象を捉えることに成功した。本結果から、18650 型 LIB 内部における温度・応力分布を同時に評価するオペランド計測技術が確立できた。さらに、既報にある充放電サイクルによる内外周における黒鉛の孤立化の差異は、電極内周部が拘束されていないことに起因することが示唆された。