社会情報学
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原著論文
〈衆人監視〉時代の「自己配慮」―フーコー権力論に基づくビッグデータ監視の考察
山口 達男
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2019 年 7 巻 2 号 p. 17-32

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抄録

本稿は,現代社会において危惧されている「監視社会化」の進展によって,どのような〈主体〉としてわれわれが形成されているかを明らかにする試みである。その際,Foucaultが監視を,「権力(生権力)」がわれわれを「主体化=従属化」するための戦略・技術として措定したことを分析の手がかりとして用いた。

その上でまず,現在の監視は「一望監視」から「データ監視」,そして誰もが監視し,監視される〈衆人監視〉へと移行していることを指摘した。そして,その移行に伴い,われわれの〈主体〉もまた変容していることを述べた。つまり,〈規律訓練型主体〉から“リスク予防型主体”,さらには〈自己配慮型主体〉への変容である。すなわち,〈衆人監視〉という現在の監視状況において,われわれは〈自己配慮型主体〉として形成されているのである。

ここでいう「自己配慮」とは,ビッグデータから自生した「規準」に沿って,自らの〈人物像〉を「制御」することを意味している。しかもそれは,Foucault謂うところの「自己への配慮」とは異なり,データ的な“自己”との関係において営まれるものである。この営為が,「誰でもない誰か」との〈衆人監視〉から要請されている点は,現代社会特有の問題と言い得る。したがって,こうした視点から現在の監視社会化を考察しなければならない。

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