抄録
我が国の財政について考える上で、「財政破綻」が重要な要素となる。この「財政破綻」は市場で取引を行う人の国債売買行動に寄与しているといえる。市場で取引する人の財政に対する考え方を調査することは、今後の我が国の財政政策を考える上で、有意義なことになり得るであろう。本研究では、市場で取引を行う人の財政に対する考え方を調査するとともに、市場で取引を行わない人や一般の人との財政に対する考え方を比較することで、世間で言われる「財政破綻」の起こりうる可能性について考察する。その結果、日頃から市場において取引を行っている人と、行っていない人では、財政政策に対する考え方が大きく異なることがわかった。そして、一般の人に広く共有されているような国債の投げ売りや財政破綻を想定した「ドミナント・ストーリー」が、市場の動向を冷静に判断していない可能性があるような人の判断に基づいていることが示唆された。