現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
長く続く非常事態の中で
生き残るための文化の創出(1)
郭 基煥
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 7 巻 p. 16-28

詳細
抄録
東日本大震災発生直後、三陸沿岸は「よく生きること」ではなく、「生き残ること」自体が問題となるような瞬間としての〈非常事態〉に直面した。しかしこの地域に住む結婚移民女性の多くにとって〈非常事態〉は3・11以前から始まっているし、今もなお続いている。彼女たちの結婚は「嫁不足」という地域社会が抱えている慢性的な危機的な状況を背景にしている。その意味でこの国際結婚は、移民女性と地域の〈長く続く非常事態の交錯〉ともいうべきものである。ここには解決すべき多くの問題がはらまれている。しかし、解決すべき問題の場は同時に何かが生まれる場として捉えることもまた可能ではないだろうか。本稿は、仙台市在住の留学生を中心とした聞き取り調査と石巻市在住外国人に対して行ったアンケート調査を元に、この可能性を追求しようとするものである。「今、ここ」を生きることが切実な課題となる非常事態にあっては、これまで続いてきた定型的な行動様式としての「文化」を守ることや、またそうした行動様式を次の世代に伝えていくことが問題ではなくなる。こうして、当人たちの状況がその外部にある「文化」に対して独立性を高めるとき、その状況にもっともふさわしい生存の形が新しく生まれる可能性があるのではないか。一般に〈長く続く非常事態の交錯〉は、「生き残り」のための新しい文化の協働の創出の場ともなるという可能性を常に持っているのではないだろうか。
著者関連情報
© 2013 日本社会学理論学会
前の記事 次の記事
feedback
Top