現代社会学理論研究
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7 巻
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  • 3・11以降の社会と理論
    樫村 愛子
    2013 年 7 巻 p. 1-2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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  • 八ッ場ダム問題を事例として
    萩原 優騎
    2013 年 7 巻 p. 3-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    2011年3月11日に発生した大地震と原子力発電所事故以降、これまでの社会の前提を問い直そうという動きが活発になった。その中で、地域社会の再生が今後の重要課題として提示され、現状における復興の在り方を疑問視する主張も多い。一例として、ナオミ・クラインの言う「ショック・ドクトリン」への批判がある。この批判は、災害前のコミュニティを元通りに再生することの支持に等しいのだろうか。多元性を重視し、特定の基準を一律に適用する政策を批判するからといって、以前のコミュニティが当該地域の人々にとって最適のものであったということを、必ずしも意味するわけではないはずである。
    八ッ場ダム問題は、地域の多元性の在り方を考えるための事例となる。この地域では、長年の対立を通じて、住民の人間関係は悪化の一途を辿り、人々は疲弊した。その末にダムを受け入れたにもかかわらず、最近になってダム建設の中止が宣言された。それに対して、地元からは多くの反発の声が上がった。ここには、環境保護という理念と、地域の個別的事情が対立するという困難が見られる。このような場合、当事者たちの多元性を無条件に認めてよいのだろうか。意思決定過程において、人々が自らの諸前提を問い直し、現状とは異なる選択肢を創出する可能性を支えるための参照枠として、社会学をはじめとする諸理論が機能し得ることを、本稿では提示する。
  • 生き残るための文化の創出(1)
    郭 基煥
    2013 年 7 巻 p. 16-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    東日本大震災発生直後、三陸沿岸は「よく生きること」ではなく、「生き残ること」自体が問題となるような瞬間としての〈非常事態〉に直面した。しかしこの地域に住む結婚移民女性の多くにとって〈非常事態〉は3・11以前から始まっているし、今もなお続いている。彼女たちの結婚は「嫁不足」という地域社会が抱えている慢性的な危機的な状況を背景にしている。その意味でこの国際結婚は、移民女性と地域の〈長く続く非常事態の交錯〉ともいうべきものである。ここには解決すべき多くの問題がはらまれている。しかし、解決すべき問題の場は同時に何かが生まれる場として捉えることもまた可能ではないだろうか。本稿は、仙台市在住の留学生を中心とした聞き取り調査と石巻市在住外国人に対して行ったアンケート調査を元に、この可能性を追求しようとするものである。「今、ここ」を生きることが切実な課題となる非常事態にあっては、これまで続いてきた定型的な行動様式としての「文化」を守ることや、またそうした行動様式を次の世代に伝えていくことが問題ではなくなる。こうして、当人たちの状況がその外部にある「文化」に対して独立性を高めるとき、その状況にもっともふさわしい生存の形が新しく生まれる可能性があるのではないか。一般に〈長く続く非常事態の交錯〉は、「生き残り」のための新しい文化の協働の創出の場ともなるという可能性を常に持っているのではないだろうか。
  • 行為論的アプローチからの展開
    濱西 栄司
    2013 年 7 巻 p. 29-40
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿では、「3・11」以後の社会を捉えるためのアプローチとして、トゥレーヌ(派)の「アクシオンの社会学」を取り上げ、従来の行為論的アプローチと関連付けながら検討を行う。3・11以後、アクターに対するリアリティは次第に薄れていくが、学問の独自性を考えれば社会学はアクターに注目し続ける必要がある。そこで本稿では、まずアクターに焦点を置く行為論的アプローチを、客観的アプローチやア・プリオリな合理的モデルと比較しつつ紹介し、その上で、アクシオンの社会学について検討していく。アクシオンの社会学は、行為論的アプローチをさらに徹底させ、様々なものが混ざり合う社会的状況の中に、アクターの萌芽・要素を見出していこうとする。また脱近代化という時代背景をふまえ、アクターの主体性や経験の次元にも切り込んでいく。その姿勢は、「批判」や「合理性の発展」とは異なる「介入」(関与)として、社会学の有用性を提起するものであり、3・11以後の社会においても重要な役割を果たすだろう。
  • 感情的行為論の礎石
    澤田 唯人
    2013 年 7 巻 p. 41-53
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿は、感情社会学批判の文脈のなかで主題化されてきた「生きられた感情」の存在論的地位を明らかにし、その行為論的意義を提示するものである。感情社会学は、人間の内なる「自然」とされてきた感情現象に働く「集合的な管理や規則」の存在を可視化することで、感情の「社会性」を謳ってきた。けれども、こうした営みが(同じく自然科学の枠組みである)「刺激-反応図式」のもとで理解されてきた「感情的行為」類型の再定式化へと向けられることはなかった。それは、個々人に「生きられる感情」という問題圏の浮上と無関係ではない。感情社会学の理論構成における行為主体は、意識的に自らの感情から距離をとり、それをものとして管理することのできる「理性的な強さ」を負荷されてきたのである。しかし、我々はむしろ自らの感情を直接的に生きること、すなわち感情的であることを余儀なくされた存在でもあろう。現象学的理解によれば、意識それ自体の「情感性(affectivité)」とは、世界内存在の根本様態であり、それは身体と意味世界との「隠喩的な接触関係」において成立している。こうした地平から、ハビトゥスに基づく習慣的行為を「身体と意味世界との図式的な調和関係」として捉えるN. クロスリーの議論を参照するならば、感情的行為とは、馴染みの無い現実に直面し、意味世界との身体図式的な関係が不協和に陥ることで体現される、有意味な「隠喩的行為」であることが示唆される。
  • 子どもの「見守り」技術の導入・受容に着目して
    野尻 洋平
    2013 年 7 巻 p. 67-79
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿の目的は、「子どもの見守り」技術としての監視技術の導入・受容をおもな題材として、後期近代における監視社会の特質を個人化論の観点から検討することである。監視社会と個人化はともに、1980 年代半ば以降に現代という時代のメルクマールとなった社会現象である。前者についてはD. ライアンが、後者についてはU. ベックやZ. バウマンが精力的に議論を展開してきた。当初これらの現象は個別に論じられてきたが、近年の日本では三上剛史が監視社会と個人化の関連性を指摘している(三上 2010)。だが、かれの指摘は抽象的もしくは断片的なものにとどまっている。現代における監視社会形成のメカニズムは、個人化の内的論理と密接に接合することによってより明瞭になると考えられるため、上記の課題を検討することが必要である。本稿では、2000 年代以降の日本社会において社会的な注目をあつめた「子どもの見守り」を題材に、監視社会が出現する社会的なメカニズムを、個人化論の諸概念をもちいて理論的に説明することを試みる。
  • サールの外在的記述と初期ロールズの内在的記述の差異について
    河村 賢
    2013 年 7 巻 p. 80-93
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    「ルールに従うこと」は社会的現実の基礎をなす原初的行為として、多くの社会学者たちの関心を捉えてきた。そこで焦点となったのは、ルールに従うことはルールによって因果的に引き起こされた行動として記述できるのかという論点であった。本稿はルールに従うことの因果的描像を最も一貫した形で提示した哲学者であるジョン・サールの社会哲学を批判的に検討することによって、この古典的な議論に決定的な結論を与えることを試みる。サールは、現実に存在する様々なルールを区分するための理念型として、統制的規則/構成的規則の二分法を導入した上で、構成的規則の持つ「新たな行為可能性を作り出す」という性質こそが、社会制度に関わる諸事実の基盤であるとした。この統制的規則/構成的規則という区分は、1950年代にロールズが「二つのルール概念」論文で展開したルールの要約的見方/実践的見方という区分を着想の源としている。だが、サールとロールズの間には、ルールとそれによって描かれる行為の関係を因果関係として捉えるか、ルールを人々が用いて様々な活動を営むという実践的関係として捉えるかという差異が存在する。そして本稿はサールのような外在的・因果的記述の立場ではなく、ロールズのような内在的・実践的記述の立場を取ることによって、社会的現実が編成される場面を、その場面に外的な装置を持ち込まずに分析することが可能になると論ずる。
  • 会話分析による検討
    平本 毅
    2013 年 7 巻 p. 94-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿では、人が会話において機会づけられた形で経験を語る様々なやり方のうちで、ある行為主体が経験した(あるいはしていない)複数の事柄が、相互に関連をもつものとして語られる特定の実践を会話分析により記述する。従来の会話分析研究においては、社会成員同士が同じ経験をもつかどうかを調べあうために、ある話題についての同一の/異なった経験を語り合うやり方が分析対象となってきた。これに対し本稿では、ある二者間で同じ経験Aをもつことが明らかになった後に、二者のどちらかが、Aを基点として、別の経験Bを組み合わせて語る現象に着目し、異なった二つ以上の経験の組み合わせを行うための発話連鎖の分析を行う。分析の結果、会話の中で二者が同じ経験Aをもつことが明らかになり、何らかの機会を利用してその内の一方が経験Aに経験Bを結びつけて語ったとき、もう一方は同じ機会を利用して経験Bを語ることにより、経験AとBの組み合わせが規範的に適切なものであり、自分も同じ組み合わせをもって語ることができる社会成員であることを示すことができることが明らかになった。
  • 西洋音楽の記譜法とシュッツのアルヴァックス批判をめぐって
    寺前 典子
    2013 年 7 巻 p. 109-121
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿は、西洋音楽の記譜法の合理化の過程を社会における時間意識の変化と関連づけて検討し、記譜法のどのような技法が疑似同時的な音楽のコミュニケーションを可能にしているのかを考察する。
    西洋音楽の記譜法の合理化の過程は、社会における時間意識が具象から抽象へと移行する過程と並行関係にある。西洋音楽の記譜法の合理化は、中世の修道院において聖書の詞の意味とそのリズムを重視しつつその抑揚を記すことに始まり、最終的に〈絶対的時間をもつ音符〉と拍子という技法の考案、すなわち普遍時間に到達する。これは記譜法の扱う時間が、具体的な質的時間から抽象的な量的時間へと移行する過程である。記譜法をめぐりシュッツはアルヴァックスを批判するが、これは質的時間を扱ったシュッツと量的時間を扱ったアルヴァックスという立場の違いから生じた。疑似同時的な音楽のコミュニケーションは、普遍時間をもつ記譜法の技法によって成立する。
  • 理論研究におけるトランスナショナリズムの意味
    西原 和久
    2013 年 7 巻 p. 122-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
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    本稿は、2012年9月の日本社会学理論学会第7回大会(於:立命館大学)における「会長退任講演」を基にした論稿である。まず序で日本社会学理論学会の現在から未来への活動に言及し、第1節ではウルリッヒ・ベックの所説も援用しながら、筆者が考えている社会学における理論の3つの位相、すなわち基層理論、中範囲理論、理念理論を論じる。第2節では現代日本社会の特性の一端を際立たせて、「閉ざされた国・日本?」という見出しでグローカルな視点からトランスナショナルな交流の諸事例を提示し、さらに第3節では21 世紀社会学の新しい課題としての3つのトランスナショナリズム、すなわち1)事実としてのトランスナショナリズム、2)方法としてのトランスナショナリズム、そして3)理念としてのトランスナショナリズムに言及し、最後に第4節で改めて方法論的ナショナリズムを超える「方法論的トランスナショナリズム」の視点を、今後の社会学理論研究の重要な方向性として(再)提起している。
  • 「現在中心主義による古典利用」再考
    澤井 敦
    2013 年 7 巻 p. 135-139
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
    ジャーナル オープンアクセス
  • 宮原 浩二郎
    2013 年 7 巻 p. 140-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
    ジャーナル オープンアクセス
  • 片桐 雅隆
    2013 年 7 巻 p. 145-148
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
    ジャーナル オープンアクセス
  • 早川 洋行
    2013 年 7 巻 p. 149-153
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/03/09
    ジャーナル オープンアクセス
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