干潟及び沿岸海底の脱窒と窒素固定が環境水中での N 収支に果たす役割を調べる目的で,それらの現場速度や環境因子との関係を検討した。定期的に調査した島しょ部の干潟では両プロセスの物質収支が N ソースとなっていたが,不定期測定を行った他の干潟では N シンクのものの方が多く,干潟により両速度の相対的関係は異なっていた。一方,湾海底は全地点シンク作用を示した。また,両速度とも水温と有意な相関が認められ,脱窒速度は水温以外に水中の硝酸濃度及び底泥中のベントス現存量とも有意な相関を示した。脱窒速度とベントスとの関係は,底泥に棲息しているベントスが脱窒菌に何らかの影響を及ぼし脱窒活性を高めている事を示唆していた。