2019 年 85 巻 6 号 p. 562-574
冷水性サンゴ類やカイメン類の群生は,多様な生物に生息場所を提供し独特な生態系を形成するが,破壊されやすく回復に時間がかかることから脆弱な生態系(VME)と見なされている。公海着底漁業によるVMEの破壊は国連総会で大きな問題となり,地域漁業管理機関はFAOのガイドラインに沿って,既存漁場と未操業域の識別,商業操業の既存漁場内への限定,遭遇プロトコルや保護区の導入等により,VMEへの重大な悪影響の回避に取り組んでいる。我が国でも着底漁業が海底に与える影響を評価・管理する枠組みの構築が必要であろう。