冷水性サンゴ類やカイメン類の群生は,多様な生物に生息場所を提供し独特な生態系を形成するが,破壊されやすく回復に時間がかかることから脆弱な生態系(VME)と見なされている。公海着底漁業によるVMEの破壊は国連総会で大きな問題となり,地域漁業管理機関はFAOのガイドラインに沿って,既存漁場と未操業域の識別,商業操業の既存漁場内への限定,遭遇プロトコルや保護区の導入等により,VMEへの重大な悪影響の回避に取り組んでいる。我が国でも着底漁業が海底に与える影響を評価・管理する枠組みの構築が必要であろう。
メコンオオナマズ種苗の放流後の行動追跡のために,超音波発信機を装着した0歳魚15個体を,タイ国ケンカチャン湖に放流した。湖に設置した20台の受信機により,最長252日間のモニタリングに成功した。放流個体の多くは,約1か月間は湖の広い範囲を遊泳し,その後,中央部やダム近くを遊泳するようになった。2か月以上追跡できた6個体で昼夜どちらかのみ受信される期間があり,水平移動の日周性が確認された。全ての個体が発信機の電池寿命前に受信が途絶える,もしくは移動しなくなり,被食,混獲,発信機の脱落が考えられた。
ウナギの完全養殖は達成されたが,飼育環境の水質維持のために頻繁な水槽の交換や洗浄が必要であり,人的にも仔魚にとっても大きなストレスとなっている。本研究ではパイプで連結したかけ流し式の水槽システム案を紹介する。パイプの断面積が約12 cm2以下,パイプ内の流速が約1 mm s−1以上という条件により,下流水槽の懸濁水が上流水槽へ漏洩することを防止できた。一方,照明をコントロールすることにより,仔魚を下流水槽から上流水槽へと能動的に移動させることができ,餌で汚れた飼育水から分離することができた。
飽和クエン酸ナトリウム(クエン酸Na)水溶液への浸漬によるスルメイカ切り身の乾燥中の褐変の抑制を検討した。飽和クエン酸Na水溶液への浸漬によって,スルメイカ乾燥中の褐変が抑制され,また,メイラード反応が抑制されていた。さらに,タンパク質分子量分布と遊離アミノ酸分析の結果から,ミオシン重鎖の分解および遊離アミノ酸の生成が抑制されたことが示唆された。以上より,飽和クエン酸Na水溶液に浸漬することで,遊離アミノ酸の生成が抑制されスルメイカ切り身のメイラード反応による褐変が軽減したことが示唆された。