2020 年 86 巻 1 号 p. 2-8
サクラマスとヤマメは,降海するか河川に留まるかというように生活史は異なるが,同種Oncorhynchus masou masouである。ただし,それぞれが利用される水域や目的はサクラマスは主に沿岸漁業,ヤマメは内水面の遊漁と異なる。また,現在の資源管理体制は両者の生物学的な共通・相違点は十分に考慮していない。そのため,一方の放流種苗が他方と交雑し,生活史の変化すなわちサクラマスとヤマメの資源組成が変化し得る等という懸念もある。本総説では,サクラマスとヤマメに関する先行研究から両者の性質を整理し,野生魚主体の包括的な資源管理を提言する。