サクラマスとヤマメは,降海するか河川に留まるかというように生活史は異なるが,同種Oncorhynchus masou masouである。ただし,それぞれが利用される水域や目的はサクラマスは主に沿岸漁業,ヤマメは内水面の遊漁と異なる。また,現在の資源管理体制は両者の生物学的な共通・相違点は十分に考慮していない。そのため,一方の放流種苗が他方と交雑し,生活史の変化すなわちサクラマスとヤマメの資源組成が変化し得る等という懸念もある。本総説では,サクラマスとヤマメに関する先行研究から両者の性質を整理し,野生魚主体の包括的な資源管理を提言する。
神奈川県横須賀市長井地先で採集したガンガゼ(殻径47.3±2.4 mm,体重48.5±1.9 gWW, n=9)に生息場所の優占海藻である褐藻カジメを与えて1年間飼育し,平均摂餌速度を求めるとともに,海藻の消化に関わる酵素活性及び炭素窒素安定同位体比を飼育個体と天然個体で比較した。飼育個体のカジメ摂餌量は夏季に最大となり,年間平均摂餌速度は0.69 gWW day−1だった。飼育終了時でのガンガゼの消化酵素活性は天然個体のものよりも有意に高く,窒素安定同位体比は有意に高かった。栄養段階を算出した結果,天然個体の栄養段階は肉食動物に相当する3.23だったことから,本海域のガンガゼの主餌料は海藻ではない可能性が示唆された。
ブリの死後に発生する血液就下現象が普通筋の保存中の肉質に及ぼす影響を検討した。10℃保存でのK値上昇率は苦悶死または延髄刺殺・脊髄破壊(即殺)の魚体の上側と下側で違いを認めなかった。カテプシンB様活性は保存4,24時間目では苦悶死の下側が上側より有意に高かった。またイムノブロッティングの結果,α-アクチニンの分解は苦悶死の下側が上側より大きく,透過型電子顕微鏡観察によるZ線の断裂や筋小胞体の崩壊も速かった。以上より,血液就下現象は保存中における普通筋の肉質低下を加速すると考えられた。