2021 年 87 巻 2 号 p. 163-165
伊勢・三河湾のスナメリ新生仔の漂着・混獲個体の筋肉を用いて,炭素・窒素安定同位体比の経年変化を調べた。その結果,1995-2018年にかけてδ13Cでは1.3‰程度の低下がみられたが,δ15Nでは明確な変化はみられなかった。他海域の海生哺乳類でも同様の傾向が報告されており,環境変化に伴う生産者のδ13Cの低下が要因の一つとされている。当海域では23年間で食物連鎖における濃縮係数と同程度の低下がみられたことから,採取年の異なる標本を用いて食性を解析する際にはこれに留意する必要がある。