日本水産学会誌
Online ISSN : 1349-998X
Print ISSN : 0021-5392
ISSN-L : 0021-5392
話題
令和5年度春季大会 高校生による研究発表最優秀賞を受賞して
谷脇 鉄平
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 89 巻 5 号 p. 494

詳細
抄録

受賞発表題目:「サンショウウオ類(クロサンショウウオ及びヒダサンショウウオ)識別プライマーの有効性の検証」

発表者:野田拓夢,和田直季(大阪高等学校 科学探究部),谷脇鉄平(大阪高等学校),山崎裕治(富山大学),中薮俊二(高岡龍谷高等学校)

1. 研究発表に至る経緯

 本校科学探究部は,2020年3月から富山大学学術研究部理学系の山崎裕治准教授との共同研究(高大接続活動)を通じて,富山県氷見市の富山大学理学部・氷見市連携研究室(ひみラボ)を拠点に,仏生寺川及び万尾川水系で環境DNA分析を利用した魚類の網羅的調査1,2)を行ってきた。これまでの調査では,両河川から多様な希少種や外来種のDNAを検出し,仏生寺川及び万尾川水系における魚種の豊富さや多様さに驚かされる結果が得られている。

 この研究を通じて,科学探究部では氷見市における魚類以外の希少種の生息状況も調べたところ,氷見市をはじめ富山県内には数種のサンショウウオ類が生息していることが確認できた。特に,氷見市ではクロサンショウウオ(環境省:準絶滅危惧)及びヒダサンショウウオ(環境省:準絶滅危惧,富山県:準絶滅危惧)の生息確認ができたが,詳細な情報は無く,また,これまで富山県氷見市では環境DNA分析を利用したサンショウウオ類の生態調査は行われていなかった。

 サンショウウオ類は,宅地開発や外来種等の影響により生息環境の分断や劣化が起きているため,絶滅が危惧されている。そのため,個体群を保護するには,繁殖場所や幼生・幼体の生息環境の保全が極めて重要となる。しかし,幼生・幼体は隠遁性が強く,種類によっては夜行性であるため,生息している野生個体を実際に観察して研究することは非常に困難である。その点,環境DNA分析は,直接生物種を確認する従来の方法に比べ調査域の水を汲むだけであるため,簡易かつ生物種を傷つけず,労力も削減でき,さらにはこれまでの共同研究と同様に直接現地に出向かずに遠隔でも研究が可能であるという利点がある。その後,2021年12月に富山大学山崎准教授から長年に渡り富山県内のサンショウウオ類の生態調査をされている高岡龍谷高等学校の中薮俊二先生をご紹介いただいたことをきっかけとし,両生類を対象とする環境DNA研究に挑戦することになった。

 本研究では,2022年4月から環境DNA分析を利用したクロサンショウウオ及びヒダサンショウウオの生態調査を行いながら,将来的には希少種の保全を目的とした生息マップの作成を試みることも併せて目的とした。

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本水産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top