日本水産学会誌
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令和5年度春季大会 高校生による研究発表最優秀賞を受賞して
浅倉 努
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2023 年 89 巻 5 号 p. 493

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抄録

受賞発表題目:「赤潮珪藻とおからの養殖飼料としての有効性の検証~オニテナガエビの飼育を通じた成長と官能評価~」

発表者:鶴岡知海(世田谷学園中学校高等学校 生物部)

1. 研究発表に至る経緯

 本学園の生徒は,養殖用飼料原料として既に使用されているSkeletonema属やChaetoceros属の珪藻が毎年夏に発生する赤潮に含まれていることに気が付き,環境問題とされる赤潮自体から直接赤潮珪藻を取り出して飼料として活用できないだろうかと考え,低コストかつ持続可能な水産養殖用飼料の開発に取り組んできた。

 これまでの研究では,東京湾のお台場海浜公園前の汽水域から採集した赤潮を培養,濾過,乾燥させることで粉末化したものを餌として使用していた。しかし,赤潮珪藻単体で餌として使用した場合,タンパク質の不足を示唆する実験結果も得られ,今回,それを補強するため,産業廃棄物の一つである“おから”を取り入れた。なお,“おから”の主成分は食物繊維であるため,飼育対象生物が食物繊維消化酵素であるセルラーゼを有している必要がある。

 オニテナガエビMacrobrachium rosenbergiiは一昨年度より飼育対象動物として利用しており,今回の海外文献調査の結果,成体がセルラーゼを有していることが確認できた。さらに,本研究では新たな知見として,稚エビ段階でもセルラーゼ活性を有していることを確認でき,稚エビが“おから”を消化できる可能性が得られた。

 以上の経緯から,新たに“おから”を赤潮珪藻に混合させた飼料をオニテナガエビに対して与え,その有効性を検証することにした。

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