抄録
ポリアミド系複合逆浸透膜(RO膜)の活性層にはカルボキシ基が存在し,このカルボキシ基の一部が脱プロトン化することにより活性層は負電荷を有する.本研究では2種類の市販RO膜を対象とし,活性層のごく表面(~数nm)の負電荷密度と平均電荷密度をそれぞれX線光電子分光法(XPS)とラザフォード後方散乱分光法(RBS)を用いて測定した.そして,これら2種類の方法で測定した負電荷密度から活性層の均一性を評価し,さらに,pH 5.4とpH 10.4における負電荷密度の違いを踏まえることによりpH 5.4における塩化物イオンの除去率からpH 10.4における除去率の予測を試みた.その結果,均一な活性層を有するRO膜についてはpH 10.4における塩化物イオンの除去率を精度よく予測することができた.しかし,不均一な活性層を有するRO膜については,ごく表面の負電荷密度を用いて算出した予測値は実際の除去率より高い値を示した.これらの結果から,不均一な活性層を有するRO膜については,不均一性を考慮した溶質透過モデルの構築が必要であることが分かった.