抄録
非線形性を伴う複雑な光化学反応を経て生成されるオゾンや二次粒子成分の濃度低減策を検討するためには、3次元領域化学輸送モデル、3次元領域気象モデル、前駆物質排出インベントリを組み合わせた、3次元領域大気質シミュレーションが有用である。筆者らは、日本をはじめ、中国、インド、さらには東・南アジア全域を対象とするシミュレーションを構築し、汚染物質の濃度低減策の立案に資するさまざまな解析を行ってきた。しかしながら、シミュレーションによる汚染物質濃度の再現性は十分ではなく、排出インベントリやモデルに課題が残されている。その課題解決を図りつつ、大気汚染だけではなく気候変動なども含めた大気環境負荷を抑制するための方策の立案に、シミュレーションが実際に役立てられることが期待される。