大気環境学会誌
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総説
数値モデルを用いた大気環境動態解析
嶋寺 光
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2019 年 54 巻 1 号 p. 9-17

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抄録

気象・大気質モデルを用いた大気環境動態解析に関する研究の成果について概説した。霧による酸性物質沈着量の空間分布推計では、森林植生への霧水沈着に伴う酸性物質沈着量の推計手法を開発し、近畿圏の山岳地域において酸性物質沈着量に対する霧水沈着の寄与がときに降雨・降雪による湿性沈着の寄与に匹敵することを明らかにした。また、関東都市大気の微小粒子状物質 (PM2.5) を対象としたモデル間相互比較研究UMICSでは、多種多様な感度解析を実施し、PM2.5の主要成分である硝酸塩の過大評価改善と有機粒子の過小評価改善の方向性を示した。さらに、2013年冬季中国でのPM2.5高濃度化の要因や夏季の近畿圏の高濃度オゾンに対する植生起源揮発性有機化合物の寄与を明らかにした。また、エアロゾル直接効果を考慮することで、中国の高濃度汚染地域で大気が安定化し、風下地域へ輸送されるPM2.5が減少することなど、大気汚染現象の解析の成果を示した。

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© 2019 大気環境学会
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