抄録
要旨:胆道診療と医療裁判について述べた.まず,最近の医療関連裁判の傾向については,件数が急激に増加した後,この数年は僅かに減少傾向にある.平均審理期間もかなり短縮された.裁判の終結区分では認容率の低下が顕著であるが和解も依然として高い割合である.また,裁判の実際について紹介した.医事訴訟委員会が機能し鑑定の問題が大きく前進したこと.医学界と法曹界の相互理解についての取り組みも積極的に行われていることを紹介した.次に実際の裁判例を提示した.医療行為に関することは学会を初めとする専門家が事例を検証することも重要であり,学会が積極的に関与することにより科学的な医療裁判が行われるのではないか.最後に学会への提言として裁判例の検討を学会期間中に行うことや,合併症の正確なデータ収集が欠かせないことを述べた.