胆道
Online ISSN : 1883-6879
Print ISSN : 0914-0077
ISSN-L : 0914-0077
24 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
第45回日本胆道学会学術集会記録
教育セミナー
  • 糸井 隆夫, 祖父尼 淳, 糸川 文英, 土屋 貴愛, 栗原 俊夫, 辻 修二郎, 石井 健太郎, 池内 信人, 梅田 純子, 森安 史典
    2010 年 24 巻 2 号 p. 156-164
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:胆道疾患における内視鏡治療,特に胆道ドレナージと内視鏡的結石除去術におけるInterventional Endoscopyの最前線について解説した.胆管ドレナージにおいては細径内視鏡や超音波内視鏡(EUS)を用いたドレナージが試みられている.急性胆嚢炎に対しては従来のPTGBDや経皮経肝的胆嚢穿刺吸引術のほかに内視鏡的経乳頭的あるいはEUS下胆嚢ドレナージが経皮経肝的アプローチが困難な症例に行われている.内視鏡的結石除去術においては従来の方法で除石困難な大結石に対してラージバルーンを用いた結石除去が行われ良好な成績が報告されている.また大結石例では細径内視鏡を用いた直接胆道鏡下EHLが試みられている.胆管結石に対する内視鏡治療の大きな進歩として,従来内視鏡治療困難とされていたRoux-en-Y症例においても小腸バルーン内視鏡を用いることにより高い除石成功率が得られるようになった.
  • 角谷 宏
    2010 年 24 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:胆道診療と医療裁判について述べた.まず,最近の医療関連裁判の傾向については,件数が急激に増加した後,この数年は僅かに減少傾向にある.平均審理期間もかなり短縮された.裁判の終結区分では認容率の低下が顕著であるが和解も依然として高い割合である.また,裁判の実際について紹介した.医事訴訟委員会が機能し鑑定の問題が大きく前進したこと.医学界と法曹界の相互理解についての取り組みも積極的に行われていることを紹介した.次に実際の裁判例を提示した.医療行為に関することは学会を初めとする専門家が事例を検証することも重要であり,学会が積極的に関与することにより科学的な医療裁判が行われるのではないか.最後に学会への提言として裁判例の検討を学会期間中に行うことや,合併症の正確なデータ収集が欠かせないことを述べた.
エキスパートに学ぶ
  • 山口 武人
    2010 年 24 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasonography:EUS)は胆道,膵疾患の診断に有用であるが,一般的な検査法として普及しているとは言い難い.その理由として,機器がやや高価であることがあげられるが,最も大きな原因は検査(走査)の難易度が高く習得に時間がかかること,未熟な検査で患者さんに苦痛を与えかねないことがあげられる.しかし,EUSはERCPに経験のある内視鏡医であれば,その定型的な走査法を身に付けることによって比較的早く習熟することができる.熟練したEUS検査によって患者さんへの苦痛を極めて少なくすることができると共に,見落としの少ない確実な診断が行えるものと考えられる.本論文は第45回日本胆道学会学術集会の特別企画,「エキスパートに学ぶ」において発表した内容をまとめたものである.
原著
  • 明石 隆吉, 清住 雄昭, 上田城 久朗, 中原 和之, 成田 礼, 堤 英治, 山之内 健伯, 陣内 克紀, 田村 文雄, 浜田 知久馬
    2010 年 24 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:ERCP関連手技後膵炎(PEP)発症の危険因子を明らかにするために,各因子と膵炎発症の関連について526例を対象として統計的解析を行った.検討因子は性別,年齢,BMI,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)の既往,蛋白分解酵素阻害薬使用の有無,十二指腸乳頭到達後の検査時間(検査時間),カニュレーション回数,膵管造影,管腔内超音波,胆管生検,胆汁細胞診,胆管ブラシ細胞診,膵液細胞診,膵管ブラシ細胞診,EST,膵管括約筋切開プレカット術,胆管ドレナージ(EBD),non-EST/EBD,膵管ステント留置,膵管ガイドワイヤー,術者(トレイニーかオペレーターか)とした.多変量解析の結果,検査時間,non-EST/EBD,膵管造影が有意な危険因子であった.検査時間の適切なcut off値を求めると15分以上と15分未満でPEP発症率に有意差を認めた.検査時間をできれば15分以内に留め,不要な膵管造影を避けることが,PEP発症の防止に重要である.
総説
  • 金子 順一, 菅原 寧彦, 國土 典宏
    2010 年 24 巻 2 号 p. 186-191
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:肝移植術後の合併症の中で,胆管合併症は最も頻度が多く肝移植におけるアキレス腱とも言われ,移植レシピエントのquality of lifeだけでなく予後にも影響する.肝移植における胆道再建法は大きく分けて,グラフト肝管とレシピエント空腸を吻合するいわゆる胆管空腸吻合とグラフト肝管とレシピエント胆管を吻合する胆管胆管吻合がある.生体肝移植における胆道再建法を比較した研究によると,胆管胆管吻合は胆管空腸吻合に比べて術後早期の胆汁瘻は少ないが,吻合部狭窄が多い傾向がある.厳密に胆管胆管吻合と胆管空腸吻合のどちらが優れているかは結論し難いが,今日では,成人間生体肝移植は胆管を病変の主座としない疾患に対し広く胆管胆管吻合が行われている.
  • 萱原 正都, 中川原 寿俊, 北川 裕久, 太田 哲生
    2010 年 24 巻 2 号 p. 192-198
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:Adenomyomatosisは胆嚢によくみられる良性疾患であるが,胆管にも同様の病変を稀にみることがある.胆管末端部から乳頭部にかけてのadenomyomatosisは1980年から現在までに自験例を含め60例の報告がある.本疾患の性差はなく,平均年齢は64歳であった.右季肋部痛・上腹部痛が多く,黄疸は49%の症例にみられた.画像診断では胆管末端の腫瘤性病変として認識されるが,確定診断に難渋し悪性腫瘍の除外診断とされることが多い.組織学的確診には共通管から下部胆管の比較的大きな組織が必要である.64%の症例で膵頭十二指腸切除がなされているが,経十二指腸的乳頭切除形成術,内視鏡的乳頭切除術,PTCSによる治療も報告されている.今後は過大侵襲治療を回避する努力が必要であり,経過観察も治療法の選択肢と思われる.以上,胆管末端部から乳頭部にかけてのadenomyomatosisの診断と治療について概説した.
症例報告
  • 粕谷 和彦, 佐口 徹, 阿部 雄太, 菊池 哲, 安田 祥浩, 池内 信人, 山内 栄五郎, 島津 元秀
    2010 年 24 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管空腸吻合部狭窄,閉塞,および離断に対し,自由な軸での回転が可能な透視台であるダブルスライドCアームとリアルタイムCTを用いたIVR(Interventional Radiology),IVE(Interventional Endoscopy)による内瘻化を行った.症例1.拡大右葉切除後の胆管空腸吻合部離断:リアルタイムCTガイド下に胆管を穿刺し,吻合部周囲の膿瘍腔を経て,空腸にステントを挿入した.症例2.拡大右葉切除後の吻合部完全閉塞:PTCDルートから挙上空腸内腔を透視下に直接穿刺し,ステントを挿入した.症例3.拡大肝左葉切除後の吻合部狭窄:磁石吻合(山内法)を行い,透視下に磁石解放の位置の決定を行った.いずれの症例も内瘻化に成功した.本透視システムは自在な方向から透視が可能であり,胆管空腸吻合部狭窄などの術後合併症に対するIVR,IVEを安全に施行し得るものであった.
  • 高舘 達之, 山本 久仁治, 森川 孝則, 小野川 徹, 志賀 清人, 小林 俊光, 元井 冬彦, 力山 敏樹, 片寄 友, 江川 新一, ...
    2010 年 24 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は54歳男性,2002年7月他院で食道癌に対し食道亜全摘術(後縦隔再建)を施行した.2007年8月FDG-PETで下咽頭癌,胆管癌を指摘され当科紹介となった.CTで肝左葉を中心に境界不明瞭な腫瘤影を認め,肝門部浸潤を伴う肝内胆管癌(広義の肝門部胆管癌)と診断した.2007年11月下咽頭癌に対し70Gyの放射線照射とdocetaxel 16mg/weeklyを投与し,同時に胆管癌に対し45Gyの照射を施行した.下咽頭癌は画像上消失したため,2008年2月肝左葉尾状葉切除,肝外胆管切除および門脈楔状切除術を施行した.腫瘍は胃管に広範に浸潤していたが,右胃大網動脈を温存する幽門側胃切除術を追加し,治癒切除を施行し得た.術後は合併症なく第19病日に退院した.浸潤傾向が強く,また重複癌であったが,集学的治療により,根治的治療が可能であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 新井 政男, 古谷 政一, 清水 康仁, 沖野 哲也, 横室 茂樹, 有馬 保生, 田尻 孝
    2010 年 24 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:39歳,男性.感冒様症状にて当院を受診した.CT,腹部超音波検査にて肝膿瘍,胆嚢腺筋腫症と診断され,PTCD用カテーテルを用い右肋間より肝膿瘍に穿刺ドレナージ施行した.第32病日,肝膿瘍は軽快し,カテーテル抜去を試みたが腹壁でカテーテルが断裂し,肝内に遺残した.同日,緊急開腹手術を施行し,カテーテルを抜去すると同時に胆嚢摘出術を行った.術後経過は良好で術後第15日に退院した.PTCDカテーテルに関する合併症としては一般的にカテーテルの逸脱,出血などが知られているが,本症例ではカテーテルの経時的な屈曲により断裂したと考えられた.肝膿瘍では一カ月以上のカテーテル留置を必要とすることが少なくないので,定期的なカテーテルの交換等,長期にわたる同一カテーテルの留置をさけることや,造影検査の際に病変部位だけでなく,カテーテルのねじれや屈曲などに留意し,カテーテル全体の注意深い観察が必要である.
  • 佐藤 秀三, 入澤 篤志, 今村 秀道, 鈴木 玲, 渋川 悟朗, 高木 忠之, 若槻 尊, 佐藤 愛, 佐藤 匡記, 池田 恒彦, 引地 ...
    2010 年 24 巻 2 号 p. 213-218
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は74歳男性.閉塞性黄疸を主訴に来院.アレルギーに関しては特記すべき既往歴なし.各種検査で切除不能膵癌と診断し,膵頭部癌による下部胆管閉塞に対し自己拡張型メタリックステント(EMS)を挿入した.施行8日後に食欲不振を訴え,発熱・貧血が認められた.EMS端による十二指腸粘膜障害を疑い,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,EMS周囲の十二指腸粘膜の発赤,浮腫,潰瘍を認めた.CTでもEMS周囲の浮腫性変化を認めたため,EMS含有金属成分に対するアレルギーを疑い,EMSを抜去しステロイド剤を投与した.十二指腸生検では好酸球浸潤がみられ,後日施行した皮膚パッチテストではコバルトに対する弱陽性反応を認めた.以上よりEMSの1成分であるコバルトに対するアレルギー反応が考えられた.胆管ステント挿入後の金属アレルギーは極めて稀であるが,起こりえる偶発症として認識する必要がある.
  • 松村 勝, 鳥越 貴行, 金光 秀一, 皆川 紀剛, 日暮 愛一郎, 岡本 好司, 山口 幸二
    2010 年 24 巻 2 号 p. 219-226
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:黄色肉芽腫性胆嚢炎(Xanthogranulomatous cholecystitis:以下XGC)は十二指腸,結腸や肝などの周囲臓器へ浸潤性に炎症が波及することで,胆嚢癌との鑑別が時に困難になる.症例は,69歳男性で,体重減少に対して近医を受診し,画像診断により胆嚢壁の肥厚を認め当科紹介となった.腹部超音波,腹部CT,腹部MRIでは十二指腸に連続する胆嚢腫瘤を認めた.また,胆嚢頚部には胆嚢結石が嵌頓していた.胆嚢癌の診断で,開腹手術を行い,胆嚢を全層切除で摘出し術中迅速病理診断へ提出したところ,悪性所見は認めなかった.最終診断は黄色肉芽腫性胆嚢炎であった.特に合併症なく,術後12日目に退院となった.胆嚢癌との鑑別診断が困難であったXGCの報告例を検討すると,本症例と同様に,胆石が胆嚢頸部に嵌頓していた例を多く認めた.術前に胆嚢癌との鑑別が困難であったXGCの1例を報告し,胆嚢癌とXGCの術前鑑別診断について若干の文献的考察を加える.
  • 二川 康郎, 恩田 真二, 藤岡 秀一, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2010 年 24 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は72歳,女性.近医における検診にてγ-GTPの軽度上昇を認め,超音波検査を施行,左肝内胆管の拡張,左肝管内に高エコー腫瘤性病変を認め,精査加療目的で当院紹介となった.腹部造影CTで肝外側区肝内胆管の拡張と左肝管内に径25mm大の淡い造影効果を伴う腫瘤性病変を認めた.ERC所見では同腫瘤は限局性で総肝管分岐部より8mmの左肝管内,B4,B2+3分岐部近傍に位置していた.同腫瘤はMRI T1強調像で低信号,T2,拡散強調像にて高信号を示した.以上より,肝門部胆管癌(左肝管癌)と術前診断し,肝左葉切除術,左側尾状葉切除術を施行した.病理組織所見は乳頭腺癌で深達度fm,胆道癌取扱い規約でstageIであった.本症例の如く,無黄疸で発見される早期肝門部胆管癌は少なくないが,軽度の胆道系酵素上昇の症例に対しては胆管癌の可能性を常に念頭におき超音波検査などの精査を行うことが重要であると考えられた.
  • 南部 知子, 浮田 雄生, 新後閑 弘章, 大牟田 繁文, 遠藤 琢朗, 渡邉 学, 前谷 容
    2010 年 24 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は88歳男性.胃潰瘍のため,幽門側胃切除,Billroth II法吻合術の既往がある.急性胆管炎で前医に入院し,総胆管結石治療のために当院を紹介され,転院した.ERCPでは総胆管に最大径20mmの結石が多発していた.内視鏡的乳頭切開術を施行した後,機械的破砕術を試みたが,結石が堅く破砕できなかった.ESWLも困難であったため,経口直接胆道鏡下に電気水圧結石破砕術併用結石除去術を試みた.大腸用内視鏡で留置した5Fr.の経鼻胆道ドレナージチューブをガイドに極細径内視鏡を胆管に挿入し,胆道鏡を行った.直視下に破砕し,細径バスケットで結石を全て除去した.偶発症はなかった.通常のERCP下結石除去術が困難なBillroth II法術後の大結石に対して,極細径内視鏡を用いた直接胆道鏡下砕石術は治療法の選択肢の1つとして有効であった.
胆道専門医講座(4)「胆管結石」―胆道専門医に求められるスキル(知識と手技)―
第2回 診断
  • 乾 和郎, 藤田 直孝
    2010 年 24 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/06
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管結石の診断法にはUS,CT,MRCP,ERCP,EUS,IDUSがある.USは最も侵襲が少ないが診断率は25~75%と報告されている.DIC-CTの胆管結石診断能は感度65~100%,特異度84~100%と高く評価されている.EUSとMRCPの比較では,EUSが感度93%,特異度96%,陽性診断的中率93%,陰性診断的中率96%であるのに対し,MRCPは感度85%,特異度93%,陽性診断的中率87%,陰性診断的中率92%と両者の診断能は優れており,統計学的な差はない.ERCPは単独で行われることは少なくなっているが,胆管結石診断の感度は67~97%,特異度82~100%と報告されている.また,ERCPの正診率86.7%,感度92.9%に対し,IDUSは正診率100%,感度100%であったと報告されており,胆管結石の内視鏡治療後の遺残結石の診断に優れている.胆管結石は生命に関わる病態をきたすことがあるため,これらの画像診断を駆使して診断する必要がある.
画像解説
feedback
Top