抄録
骨格筋における脂肪酸エネルギー代謝では、TCA回路で消費される以上のアセチル CoA(AcCoA)が
ミトコンドリア内で生成されるため、遊離 CoA の減少に伴う代謝低下を招く恐れがある。長鎖脂肪酸 β
酸化では、カルニチンが生成された AcCoA のアセチル基をアセチルカルニチン(ACT)に転換する事
で、ミトコンドリア内の CoA 量を制御する。タウリンには、酢酸(アセチル基)をN-アセチルタウリン(NAT)に転換する作用がある事と、持久性運動時により骨格筋や血液中で NAT 量が増加する事から、タウリンにもミトコンドリア内の AcCoA と CoA のバランスを制御する作用があると考えられる。本研究では、マウス C2C12 筋管細胞による検証で、タウリンは短鎖脂肪酸(酢酸)を NAT に、カルニチンは長鎖脂肪酸を ACT に転換する事で、ミトコンドリア内の AcCoA の過剰な蓄積を防ぎ、円滑なエネルギー代謝を維持している事が明らかとなった。