2023 年 37 巻 2 号 p. 162-172
目 的
背部温罨法が非妊娠・非授乳期女性のストレスと乳房血流に及ぼす影響を明らかにする。
対象と方法
対象は20~41歳の非妊娠・非授乳期で月経周期が卵胞期の女性21名(23.6 ± 5.3歳)。同一被験者に背部温罨法(以下,温罨法群)と仰臥位安静(以下,安静群)を別日の同一時間帯に実施し2群間を比較した。実験の流れは,介入前安静・介入(背部温罨法または仰臥位安静)・介入後安静を各15分間とした。ストレスは,唾液検体からコルチゾールとヒトヘルペスウイルス6型・7型(以下,HHV6・HHV7)および1:不快から9:快までの9段階リッカート尺度(以下,快-不快)を用い,介入前後と実験終了時に検体採取等を行い評価した。乳房血流は,レーザードップラー血流計を用いて実験中連続測定し5分毎の平均値を求め評価した。
結果・考察
ストレスは,コルチゾールとHHV6・HHV7では2群間に有意差を認めなかったが,快-不快では温罨法群が安静群よりも有意に快であった(p < .01)。背部温罨法が対象を快の状態に導くことは示されたが,ストレスに及ぼす影響を明らかにするには至らなかった。乳房血流では介入方法と時間の交互作用を認めた。時間の単純主効果が有意であったため多重比較を行ったところ,介入前の基準値に対し,温罨法群は介入後すべての時点で有意差を認め(順にp < .05,p < .01,p < .05),安静群は介入中5~10分と介入後すべての時点で(すべてp < .01)有意差を認めた。両群ともに介入後の乳房血流の変化が大きかったが2群間に有意差はなかった。背部温罨法は,実施中には乳房血流増加への影響はわずかであるが,実施後の乳房血流を促進することが示唆された。しかし,仰臥位安静のみでも介入後の乳房血流を促進する可能性が残された。
結 論
背部温罨法は仰臥位安静と比較して,対象をより快の状態に導くことが示された。また,温罨法中の乳房血流に影響を及ぼすことなく,実施後の乳房血流を促進することが示唆された。