2023 年 12 巻 2 号 p. 83-93
非血縁者間臍帯血移植は,HLA適合血縁及び非血縁ドナーが得られず,迅速な同種造血細胞移植が必要な症例にとって,重要な移植細胞ソースとなっている。本邦の臍帯血移植は,単一ユニットを用いること,欧米と比べてユニット選択基準が寛容であること,進行期症例にも積極的に実施することなど,諸外国とは異なる特徴があり,国内データに基づいたエビデンスを創出していく必要がある。当初,早期死亡率が高いとされた臍帯血移植であるが,支持療法の進歩と同時に,疾患ごとの臍帯血移植適応の基準,CD34陽性細胞数や抗HLA抗体測定に基づいた臍帯血ユニットの選択,移植前処置,GVHD予防法などの改善や最適化に伴い,好中球生着率や早期死亡率も時代に応じて改善しつつある。また,臍帯血移植に特徴的な軽症移植片対宿主病に伴う生存改善効果は,再発と非再発死亡の両者を抑えることで,高リスク症例の予後を改善する可能性が期待される。