東海北陸理学療法学術大会誌
第23回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: P019
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脊髄損傷者をめぐる情報提供・交流活動
「社会生活講座」を企画して
*後藤 純子江口 雅之原田 康隆中村 恵一山中 武彦田中 宏太佳
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抄録
【はじめに】近年,社会復帰しうる身体機能・能力を有するにも関わらず,自宅に閉じこもり孤立化している脊髄損傷(以下,脊損)者の存在がしばしば認められる.この度,障害者団体の協力を得て「社会生活講座」を企画し,脊損者をめぐる情報提供・交流活動を行う機会を得たので報告する.
【背景】当院リハビリテーション科(以下,当科)は,当科入院患者の9割を脊損者が占め,近年までは受傷から家庭復帰までのいわゆる包括的リハビリテーションが行われていた.以前は,入院患者同士,家族同士,社会復帰した脊損者と入院患者の間に縦断的・横断的な交流があり,医療者からは提供しにくい相談機会が入院生活の中で確保されていた.しかし入院期間の短縮をはじめとする医療情勢の変化に伴い,交流・相談機会が減少した結果,リハビリテーション(以下,リハ)の具体的目的や社会生活をイメージできないまま,退院・転院を余儀なくされるケースが増加している.
【社会生活講座とは】当講座は,社会生活をしている脊損者を講師として招き,患者・家族に交流・相談の場を提供することを特徴とする.医療福祉サービス情報や生活課題のアドバイス,脊損者としての共感を通じ,生活に密接したリハのゴールに関する理解を深め,脊損者の社会復帰およびQOLの向上に寄与することを目的とする。また,患者・家族のネットワーク作りの契機となることも期待される.
現在までに脊損者による講演を3回開催した.入院患者の機能レベルや年齢層・社会歴等を考慮しつつテーマを選び,愛知頸髄損傷者連絡会の協力を得て講師を選定している.講座終了後の参加者アンケートでは,講座企画の満足度に関し「大変満足」48%,「やや満足」43%,今後の参加希望に関し「積極的に参加したい」44%,「参加したい」53%との回答を得た.スタッフアンケートでは,職員として講座に参加し役に立ったと思うと答えたものが95%を占めた.講師自身の満足度も高く,機会があればまた講演したいとの意向を全員が示した.
【講座の企画をめぐる議論】当講座を企画するにあたり,急性期病院であり,かつ東海地方における脊損リハの中核的病院に属する当科が,障害当事者同士の交流に介入するべきかどうか,少なからず議論を生んだ.試行を含めた講座開催を重ねた結果,脊損者に対するゴール設定の明確化や社会復帰の促進を目指す中で,リハ診療の一環として講座を継続する方針が固まった.今後は院内他科の協力も得て,病診連携に取り組んでいく予定である.
【おわりに】脊損者の社会復帰が進まないことに対する憂慮は,脊損者自身のQOLの問題に止まらない.社会の一財産として脊損者の力を発揮しうるべく,医療・福祉現場のサポート体制の整備,障害者団体・当事者・家族の一層の自助努力に基づいた地域連携の促進に向け,一歩一歩踏み込んでいきたい.
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© 2007 東海北陸理学療法学術大会
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