抄録
【はじめに】頭・頚部の素早い動きでretinal slipが起こり、dynamic visual acuityが悪くなることは知られている。今回、健常人に対してgaze stability exerciseを施行し、その効果についてdynamic visual acuityより検討したので報告する。【方法】対象は、研究の趣旨を説明し同意を得た健常な男女27人(対象群:22名、年齢:19.1±2.5歳、コントロール群:5名、年齢:20.4±0.9歳)である。dynamic visual acuityの評価は、被験者の70cm前方に5つの数字が書かれた紙を提示し左右35°の70°の範囲、2Hzの頻度で頸部の回旋を行い、これらの数字を答えさせ、正解率を求めた。数字はフォントサイズは12、14、16、18、20の5種類で、各数字を2回ずつ、合計50個の数字をランダムに見せる。gaze stability exerciseを3週間行わせ、訓練の前後に評価を行った。解析方法はpaired t-testにより行い、pre exerciseとpost exerciseでdynamic visual acuityの比較を行った。有意水準は5%以下とした。【結果】対象群に関しては、pre exerciseで42.7±36.2%、post exerciseは73.7±25.1%であり、pre exerciseに比べpost exerciseは有意にdynamic visual acuityが向上した(P<0.001)。一方コントロール群に関しては、pre exerciseは46.4±11.6%、post exerciseは38.8±25.1%であり、pre exerciseとpost exercise間では有意差が認められなかった(P=0.5)。【考察】gaze stability exerciseは前庭障害患者に対し前庭機能を高めるために有効であるが、健常人においても頚部回旋時のdynamic visual acuityの向上に対し有効であることが示唆された。これは眼球・頸部運動を通して小脳による学習が起こり、頸部回旋時のdynamic visual acuityの向上を引き起こしたと考えられる。今後スポーツ分野における競技能力の向上やや退行性変化などによる機能低下に応用していきたい。