抄録
【はじめに】
心肺疾患に加え,脳梗塞による重度片麻痺・高次脳機能障害を呈した患者を担当した.急性期におけるリスク管理の難しさを学んだので,報告したい.尚,本発表に際し,本人・家族に説明し,書面にて承諾を得た.
【症例紹介】
51歳男性,肺胞出血・心不全により入院し,入院7日目に左中大脳動脈領域の広範囲な梗塞を発症した.右片麻痺は重度であり,高次脳機能障害として失語症,ゲルストマン症候群,右側注意力低下,性急性が見られ,すべての動作に介助を要した.また入院21日目に陳旧性下壁心筋梗塞が既往として診断された.コミュニケーション困難や病態否認による混乱,異常行動,精神的不安定さが見られ,リスク管理及び訓練の進行が難しい症例であった.
【理学療法中のリスク管理】
リスク管理は血圧・心拍数などに加え,運動負荷量を調整すること,混乱を避け精神安定を図ることを念頭に置き,1.心電図モニター装着によるリスク管理(常に監視することで,患者の行動に注意を払う),2.訓練内容をパターン化することによる学習の効率化,3.単純な運動で負荷量を少なく設定する,とし理学療法プログラムを実施した.
【まとめ】
急性期ではリスク管理が重要であるが,本症例は心肺脳の多疾病に対するリスク管理に加え,指示理解困難や性急性などの高次脳機能障害と精神面の調整も必要であり,リスク管理と訓練の進行が難しい症例であった.多疾病患者や自覚症状が訴えられない患者,指示理解が困難な患者には病態からおこる症状や精神面など多くのことを考慮し,総合的なリスク管理や安全で有効なプログラムが必要であると学んだ.