東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-34
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運動開始に伴う肺への血流量増加がミトコンドリアにおける酸化的リン酸化能力に及ぼす影響
*久保 裕介石川 結賀藤田 大輔西田 裕介
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抄録
【目的】 運動開始時において,運動負荷強度に相応なATP供給は,骨格筋のミトコンドリアにおける酸化的リン酸化過程から得られるATPだけでは賄えきれない。酸化的リン酸化過程から得られるATPだけで需要量のATPを賄うためには,2分から3分の時間を要する。この生体応答は,肺の酸素摂取量(V(dot)O2)の描写(第1相から第3相)を解析することで模擬的に再現できる。第2相のV(dot)O2の立ち上がりの速さは,時定数(τ)により解析される。その立ち上がりの速さ(τV(dot)O2)は,酸化的リン酸化過程からのATP産生速度を示す。τV(dot)O2が速いほど酸素不足が少なくなり,さらには,運動耐容能も高くなることが報告されている。そのため,τV(dot)O2を加速させる要因の検討は,重要な課題であると考えられる。そこで,本研究では,第2相の前に存在し,活動筋から肺毛細血管への血流量の移動時間を反映する第1相に着目した。第1相に要する時間の短縮は,心拍出量の増加速度を加速させ,肺への血液流入速度を速めることで,骨格筋への酸素供給を効率良くすることができると考えられる。したがって,今回は,τV(dot)O2を加速させる要因として第1相に要する時間を挙げ,それらの関係性を検討した。また,第1相に要する時間が短く,τV(dot)O2が速いほど,運動耐容能が高くなると仮説を立て,第1相に要する時間,τV(dot)O2と最高酸素摂取量(peak V(dot)O2)との関係性も検討した。 【方法】 対象は,若年健常男性7名(平均:年齢21.0±0.0歳,身長166.0±6.4cm,体重62.1±4.3kg)とした。測定項目は,最高酸素摂取量(peak V(dot)O2/W),第1相に要する時間,τV(dot)O2である。方法として,まず,自転車エルゴメータによる多段階漸増運動負荷試験を行い,peak V(dot)O2を測定した。運動負荷は1分間に20Wずつ増加するよう設定し,ペダル回転は60rpmとした。また,その際にV-slope法および呼吸商から嫌気性代謝閾値(AT)を決定した。次に,一段階運動負荷試験におけるτV(dot)O2の測定を行った。2分間の安静の後,20W,60rpmにて3分間のウォーミングアップを行い,その後,多段階漸増運動負荷試験により決定したATの80%負荷強度にて6分間の一段階運動負荷試験を行った。τV(dot)O2は,表計算ソフトMicrosoft Office Excelを用い,非線形回帰にて算出した。一段階運動負荷試験は計4回行い,τV(dot)O2の平均時間を算出した。統計学的検討には,各測定結果の相関関係についてピアソンの相関係数を用い,有意水準は,危険率5%未満とした。なお,本研究は、ヘルシンキ宣言(ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則)に則り,対象者に口頭ならびに書面にて同意を得て実施した。 【結果】 各指標の平均値と標準偏差は,第1相に要する時間は19.3±5.7(s),τV(dot)O2は42.1±7.3(s),peak V(dot)O2/Wは39.9±5.2(ml/min/kg)であった.各指標の関係性は,第1相に要する時間とpeak V(dot)O2/Wで有意な負の相関を認めた(r=-0.820,p<0.05)。しかし,第1相に要する時間とτV(dot)O2との間には,有意な相関関係が認められなかった(r=-0.056,p=0.904)。また,τV(dot)O2とpeak V(dot)O2/Wとの間にも有意な相関関係が認められなかった(r=-0.191,p=0.681)。 【考察】 本研究では,第1相に要する時間は,τV(dot)O2に影響を及ぼさないことが示唆された。また,第1相に要する時間が短いほど,運動耐容能が高いことが示唆された。先行研究において,年齢の増加にともない第1相に要する時間は有意に長くなったが,τV(dot)O2に関しては年齢の増加と有意な関係は認められなかったとの報告がある。この解釈として,第1相に要する時間が長い場合は,その代償にV(dot)O2を速く適応させるように生体が応答すると考察している。本研究においても,このような代償作用が働いた可能性はある。しかし,本研究の第1相に要した時間は,一般的な値であり,著しく遅いとは考え難い。そのことから,τV(dot)O2に悪影響を与えない値,つまり正常の範囲内であったため,第1相に要する時間とτV(dot)O2との間に有意な相関関係が認められなかったと考えられる。 【まとめ】 若年健常男性において,第1相に要する時間はτV(dot)O2を加速させる要因ではないことが示唆された。この考察から,第1相の正常な範囲が確認できたとも解釈することができる。そのことから,本研究で得られた第1相に要する時間(19秒)は,第1相が遅延する疾患群において,トレーニング効果の目標値として参考になると考えられる。
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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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