東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-47
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投球数増加に伴う肩関節位置覚の変化
*矢澤 浩成, 水谷 仁一, 加藤 貴志, 細川 厚子, 太田 和義
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抄録
【目的】投球動作は肩関節にとって大きなストレスのかかる動作であり,投球動作が繰り返されることで肩関節機能に影響を及ぼすことが報告されている.その中で野球選手の投球数増加に伴う肩関節可動域や肩周囲筋力についての報告は散見されるが,肩関節位置覚を検討したものは多くはない.関節位置覚は身体各部位の相対的位置を感知する感覚と定義されており,肩関節位置覚は投球動作にとって重要な感覚であると考える.そこで今回は成長期である中学生野球選手を対象とし,投球数増加に伴う肩関節位置覚の変化について調査したので報告する.<BR> 【方法】対象は,愁訴のない右手投げの中学生野球選手15名とした.年齢13.5±0.8歳,経験年数5.7±1.4年,身長162.6±12.2cm,体重48.6±12.0kgであった.ポジションは投手3名,捕手2名,内野手4名,外野手1名,複数のポジション5名であった.測定に先立ち対象者には測定内容を説明し,痛みが発生したなどの不利益となる場合には,ただちに中止できるよう配慮した.なお本研究は名古屋市立大学倫理委員会の承認を受けて行った.<BR> 測定は室内で行った.対象者はウォーミングアップの後,約4m離れたネットに向かい投球した.投球数は20球を1セッションとし,合計80球(4セッション)の全力投球を行った.なお,球種はストレートで,セットポジションからの投球とした.投球間隔は約20秒で,各セッションの間隔は約6分とした.投球前・20・40・60・80球後に肩関節位置覚およびボルグスケールを用いた自覚的運動強度を測定した.<BR> 肩関節位置覚の測定は先行研究(第7回肩の運動機能研究会,2010)の方法に準じて行った.測定部位は右肩関節とし,端座位,閉眼にて行った.まず検者が口頭で,「肘を伸ばし,水平と思うところまで腕を挙げてください.」と指示した.運動は前額面における肩関節外転運動に規定し,対象者には水平と認識する位置を表現し,静止してもらった.測定は5回行い,後方よりデジタルカメラで静止位置を撮影した.撮影した画像から上腕骨長軸と床への垂線とのなす角度を計測した.5回の測定角度について,最大値から最小値を引いた値(difference of angle:以下,DA)をバラつきの指標として算出した.<BR> 検討方法は,投球前のDAと年齢,経験年数について,ピアソンの相関係数の検定を行った.また投球前・20・40・60・80球後のDAおよび自覚的運動強度についてSteel-Dwass法にて多重比較検定を行った.有意水準はいずれも5%未満とした.また各セッションにおいてDAが10°以上となる対象者を抽出し,さらにDAが最大となるセッションについて個別に確認した.<BR> 【結果】投球前のDAは年齢と有意な相関関係(r=-0.6)を認めたが,経験年数とは相関関係を認めなかった.<BR> 投球数増加に伴うDAの変化について,投球前5.5±2.2°,20球後7.2±3.9°,40球後6.6±3.4°,60球後7.2±3.4°,80球後5.9±2.6°となり,各セッション間で有意差は認められなかった.自覚的運動強度は,20球後8.7±1.6,40球後10.8±1.6,60球後12.2±1.7,80球後13.7±2.1となり,投球前と20・40・60・80球後,20球後と40,60,80球後,40球後と80球後の間で有意差が認められた.<BR> またDAが10°以上の対象者は,投球前1名,20球後3名,40球後1名,60球後3名,80球後1名存在した.DAが最大となるセッションは,投球前1名(6.7%),20球後5名(33.3%),40球後2名(13.3%),60球後5名(33.3%),80球後2名(13.3%)であった.<BR> 【考察】いわゆる投げすぎは投球障害の一要因として考えられており,青少年の野球障害に対して全力投球数が提言されているが,その具体的根拠は明確になっていない.そのような状況の中,今回は肩関節位置覚に注目して投球数増加に伴う変化について調査した.<BR> まず投球前のDAは年齢と相関を認め,経験年数とは相関を認めなかった.これは関節位置覚が学習によって獲得される技能・技術などに比べ,心身機能の発達と関係が強い感覚であることを示唆している.そのため今後は幅広い年齢層での調査を行う必要があると考えられた.<BR> 次に,投球数増加に伴う変化について,自覚的運動強度は漸増したが,DAには有意な変化がなかった.田崎らは高校野球投手を対象とした研究において,肩関節位置覚の誤認が試合登板後に生じていたと報告している.本研究と結果が異なった要因に,対象や測定場面および測定方法の違いが考えられるが,本結果を個別に確認したところ,DAが10°以上という大きなバラつきを生じている対象者も存在した.また,DAは必ずしも漸増的な変化は生じず個人によって様々であった.肩関節位置覚の投球数増加に伴う変化には、投球フォームが影響している印象があり,今後は投球フォームとの関係について検討する必要があると考えられた.
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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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