東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-06
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糖尿病性腎症患者に対する透析中運動療法の効果
*小関 裕二藤原 雄大熊嵜 洋三曽我 竜佑水鳥 美希塚本 祐司岩田 全広加藤 ふみ
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抄録
【目的】糖尿病患者は、血糖のコントロールを行い、合併症の発生を予防することが重要である。代謝改善のための運動療法は、軽度から中等度の運動負荷にて、20分以上の持久力訓練やレジスタンストレーニングの実施が推奨されている。しかし、糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者の場合は、透析治療による時間的制約のため、代謝改善のための運動療法を実施することは、困難なことが多い。今回、我々は糖尿病性腎症透析患者に対し、透析中の運動療法(以下DHDex)を実施し、代謝における影響及び、下肢筋力・持久力の変化について調査を行った。
【方法】対象は平成21年9月から平成23年6月の間に、DHDexを実施した21名のうち、2型糖尿病を原疾患とする血液透析患者8名、男性7名、女性1名とした。平均年齢は67.2±4.4歳、平均透析期間は5.3±4.4年であった。混合型インシュリン使用者4名、経口血糖降下薬使用者0名であった。なおコントロール不良な高血圧患者、中枢性疾患や整形疾患により、運動実施が困難な患者、活動期の糖尿病性網膜症患者、重度心疾患患者、運動実施期間にインシュリン及び経口血糖降下薬の種類や投与量が変更になった患者は対象から除外した。下肢筋力はμTasMF-01を使用し、等尺性膝伸展筋力の測定を行った。左右膝伸展筋力の平均値を体重で除し、体重比を求めた。持久力検査としては、30m区間を往復歩行する非激励型の6分間歩行テスト(以下6MD)を行った。なお6MD検査に同意されなかった患者については、実施しなかった。DHDexは週3回実施した。透析開始1時間後にベッド上にてストレッチを行い、重錘負荷及びセラバンドにて下肢筋力強化を20セット実施した。持久力訓練としては、ベッドバイクを1時間実施した。運動負荷量は自覚的運動強度の「楽である」の強度とし、運動中は何度でも休憩可とした。運動負荷にて重症不整脈、虚血性変化が心配される患者については、運動療法導入時に心電図モニター管理にて運動を行った。またDHDex中に胸部の痛み、めまい、呼吸困難が出現した場合は、近くの医療スタッフに通知するように指示した。リスク管理については、「心血管疾患におけるリハビリテ-ションに関するガイドライン」に示されている運動負荷の中止基準を適用した。運動介入前と3ヶ月経過時に運動機能検査、血液検査を行い、比較検討を行った。分析は対応のあるt検定を行なった。対象者へは、本研究と運動介入についての目的とリスクについて説明文書を作成し、同意のサインを得て実施した。
【結果】運動療法継続率は100%であった。DHDex実施期間中において、運動負荷の中止基準の対象となるような症状は見られなかった。運動介入前の膝伸展筋力は、30.5±13.4%であり、平澤らによる健常者の基準値より低値であった。6MDについては、4名実施可能であり、372.3.±50.4mと大西らによる健常者の基準値より低値であった。膝伸展筋力の変化としては、3か月後35.6±13.1%であり、介入前と比べ、統計学的有意差が認められた。(p=0.03)6MDの変化としては、3ヵ月後384.6±42.3m(p=0.06)であった。HbA1cにおいては、介入前6.7±0.8%、3ヵ月後6.2±0.9%(p=0.06)であった。DHDexにおいて、下肢筋力、持久力及び糖代謝が改善する傾向がみられた。患者の中には、「透析時間が短く感じるようになった」、「非透析日に散歩するようになりました」などの積極的な意見が聞かれた。
【考察】透析患者の運動耐容能は健常成人の50~60%程度、下肢筋力に関しては約40%程度と報告されている。今回の研究においても、同様の結果が得られ、透析患者の運動療法の重要性が再認識された。しかし、透析患者に推奨されている運動方法は、非透析日にあまり無理をしないウォ-キング程度の運動とされている。透析患者の自主性に任せた運動は、その必要性が認識されているにもかかわらず、なかなか定着しない実情がある。MooreらはDHDex中の血行動態は、透析開始後2時間までは安定していると報告している。DHDexは、ベッド上で血管を穿刺したまま行う為、運動内容は低負荷なものに限定されるが、代謝改善のための長時間の運動や運動継続のためには、理想的な環境であるとも考えられる。Romijinらは低強度の持続的な運動では、運動中のエネルギー源の80%が、糖や遊離脂肪酸であるとしている。そのためDHDexにて、下肢筋収縮におけるインシュリン非作用の糖取り込み促進や内臓脂肪の減少によるインシュリン抵抗性の改善がみられ、更には、筋肉量増加が基礎代謝量を向上させ、糖代謝改善に繋がったのではないかと推察する。またDHDex実施により、透析中の心理的苦痛を和らげ、透析療法を主体的に考えるようになったと思われる。
【まとめ】DHDexは、運動継続率が高く、身体機能や代謝改善、精神面にも良い影響を与えている。
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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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