東海北陸理学療法学術大会誌
第27回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-08
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当院における癌のリハビリテーションの現状
*櫻木 聡松川 千賀子中澤 正樹真方 淳一清水 愛子志水 理香長田 ゆき奥岡 由佳杉山 統哉
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抄録

【目的】 当院は1985年に「がんと免疫」をテーマに掲げ民間のがんセンターを目指し開院されたため、がん患者のリハビリテーションに関わる機会も多い。日本の死因順位の一位でもあり今後高齢化社会が進む現状を考えると、ますますがん患者が増加する可能性が高くリハビリテーションが関わる場面も多くなることが予想される。今回当院でのがんのリハビリテーションの現状について報告する。 【方法】 昨年度リハビリテーションを行ったがんの患者数を抽出し、診療科、リハビリ目的、転帰、緩和ケアチーム関与、に分けて患者数、リハビリ期間を集計した。当院ではリハビリ開始時および終了時にEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス(以下PS)にて身体機能のスクリーニング評価をしており、PSの数値も合わせて集計した。 【結果】 昨年度のリハビリテーション受診患者数は1263名であり、そのうちがん患者数は182名で全体の約14.4%である。がん患者数は血液化学療法内科(60名)、外科(41名)、整形外科と呼吸器科(各22名)の順に多かった。リハビリ目的別の患者数は「ADL向上」が86名、「ADL維持」が30名、「呼吸リハビリ」が27名、「嚥下リハビリ」が19名、「リンパ浮腫軽減」が8名、「乳癌周術期」が6名、「上肢腫瘍に対するROM訓練」が4名、「動作指導」が4名、「疼痛緩和」が2名と多岐にわたるものであった(一症例に対し重複ケースあり)。転帰別の患者数およびリハビリ期間(「患者数/平均リハビリ期間」と表記)は、「自宅および施設へ退院」が(117名/31.8日)、「死亡」が(22名/54.3日)、「他院に転院」が(20名/41.4日)、「病状悪化による中止」が(11名/28.3日)、「病状改善による終了」が(9名/11.0日)、「継続入院中」が3名、上記症例の中で緩和ケアチームが介入している「緩和ケアチーム関与」群も別に集計し(13名/53.9日)であった。PS(平均値)は「自宅および施設へ退院」が開始時2.47、終了時2.08、「死亡」が開始時3.32、「他院に転院」が開始時3.50、終了時3.40、「病状悪化による中止」が開始時3.18、終了時3.55、「病状改善による終了」が開始時3.11、終了時が2.89、「継続入院中」が開始時2.67、「緩和ケアチーム関与」が開始時3.15、終了時3.08であった。 【考察】 転帰別で各群の開始時PSを比較すると差がある傾向がみられた。各群内で開始時PSと終了時PSを比較すると「自宅および施設に退院」に差がある傾向がみられた。これらの結果よりリハビリ開始時のPSが転帰に関係している可能性も考えられるが、がんの種類やリハビリ目的によってリハビリの内容やリハビリ期間、転帰が大きく変わり、リハビリの内容もADL向上を目的とした筋力・体力増強訓練、ADL維持を目的とした関節可動域訓練、離床訓練、胸部・上腹部の周術期における呼吸リハビリテーション、リンパ浮腫に伴うドレナージやマッサージ、疼痛緩和目的のタッチングなど様々であるため、疾患別で集計するなどさらに細かくみていく必要があると思われる。またがん患者は「トータルペイン」を抱えており、精神面での影響も大きいため、そのあたりを考慮する必要があると思われる。 【まとめ】 当院は2010年6月に愛知県がん診療拠点病院に指定され、リハビリテーション部も同年に緩和ケアチームの一員となったため今後ますますがんのリハビリテーションに関わる機会が増えていくものと思われる。がん患者のリハビリテーションを担当するようになり、がんのリハビリテーションに関わるためには疾患に対する医学的な知識や身体症状へのアプローチ方法、精神的なケアの方法など多岐にわたるスキルが不可欠だと感じたため、今後定期的な勉強会の開催や他部門との連携を深めていくことが重要だと考えられる。

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© 2011 東海北陸理学療法学術大会
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