東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-63
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一般口述
荷重訓練時、不安定板(Proprio foot)を用いた中殿筋へのアプローチ
*小野寺 基允浅井 友詞石井 康太中村 浩輔安田 裕規鵜飼 高史日高 三智水谷 武彦水谷 陽子今泉 司
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キーワード: 荷重訓練, 不安定板, 中殿筋
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抄録

【目的】 高齢者における大腿骨頸部骨折患者の手術後は、筋などの軟部組織への侵襲や退行性変化により股関節周囲筋の筋活動が低下し、動作時のバランス能力に障害がみられる。
 一般的に中殿筋の筋力増強訓練は、Open Kinetic Chainでの訓練に加え、荷重時に骨盤を安定させる筋として重要であることから、Closed Kinetic Chain(以下:CKC)での訓練を施行する必要がある。CKCでのトレーニングとして不安定板を用いているが、中殿筋への効果は不明瞭であり、中殿筋の動作時筋活動に対して検討されているものは少ない。
 本研究の目的は、CKCでの中殿筋の訓練方法として、荷重訓練時に不安定板(以下、Proprio foot)を用いて中殿筋へのアプローチを行い、訓練方法の有効性について筋電図学的に検討することである。
【方法】 対象は健常男性19名(26.6±6.5歳)で、本研究の趣旨及び手順を説明し、同意を得た。荷重訓練は、メトロノームを用い、0.5Hzのリズムで3分間左右に荷重を繰り返し、同時に荷重量を確認するため、ヘルスメーターを使用した。さらに、軸足にはProprio footを置き、利き足はProprio footと同厚の板で下肢長に合わせ、足幅は身長の20%とした。筋電図は、表面筋電計(MegaWinME6000)を用い、電極は30㎜で、ディスポーザブル電極(L vitrode日本光電工業株式会社社製)を使用し、左右の大腿筋膜張筋・中殿筋・大腿二頭筋の筋活動を表面筋電図により検索した。電極の添付位置は、Perottoの方法に準じて、大腿筋膜張筋は大転子より2横指前方、中殿筋は腸骨稜の中点より25㎜ほど遠位、大腿二頭筋は腓骨頭と坐骨結節を結ぶ線の中点とし、電極間距離は30㎜とした。
 データ解析には、筋電図解析ソフトMegaWin software 700046を用いて積分値を算出し、3筋の積分値の合計より各筋の比率を表した。
【結果】 荷重訓練中の中殿筋の筋活動を左右で比べた結果、Proprio foot使用側の中殿筋活動が高いものが6名(以下:H-P群)であり、Proprio foot使用側の方が中殿筋の筋活動が低いものが13名(以下:L-P群)であった。H-P群、L-P群ともにProprio foot使用側の荷重訓練時の筋活動の割合は、H-P群で大腿筋膜張筋34.5%、中殿筋36%、大腿二頭筋29.5%であり、L-P群で大腿筋膜張筋46.3%、中殿筋30%、大腿二頭筋23.8%であった。
【考察】 H-P群とL-P群の比較において、大腿筋膜張筋の筋活動の割合がH-P群34.5%、L-P群46.3%となり、L-P群で高い傾向がみられた。これは、股関節の屈曲や骨盤の回旋による代償運動が起こり、大腿筋膜張筋が優位に働き中殿筋の活動が抑制されたことが考えられる。
 また、H-P群6名、L-P群13名とL-P群の方が多いことにより、Proprio footを用いた体重負荷トレーニング時には骨盤の回旋運動を誘発することが推測される。今後、Proprio footを用いたトレーニングでは、正しい動作が行えるよう筋の触診や運動指導により中殿筋の活動を促通する必要がある。
【まとめ】 Proprio footを用いて中殿筋へのアプローチを行い、訓練方法の有効性について筋電図学的に検討した。結果、Proprio footを用いた荷重訓練において、目的とした中殿筋よりも大腿筋膜張筋の筋活動の割合が高かった。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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