2022 年 27 巻 10 号 p. 10_15-10_18
筆者は人工内耳を装用している研究者である。自分でも言葉でうまく説明ができない原因不明の言葉の聞き取りづらさを抱えて研究してきたが、オーディトリー・ニューロパシーという蝸牛神経の働きが悪くなる希少疾患を患っていることが5年前に判明し、人工内耳の埋め込み手術を受けて人生の途中で「障害のある研究者」となった。聞こえの問題が判明してから現在に至るこれまでの経過を振り返りながら、特に大学以降の研究者としてのキャリアを重ねていく過程の各時点で抱えた困りごとの特徴を整理する。障害がある研究者としての体験の経過を分析して「障害のある研究者」当事者研究を試みた。最後に、まとめとして「障害のある研究者」当事者研究をふまえて、当事者の立場から「三つの場」の提案をおこなった。