2022 年 27 巻 12 号 p. 12_22-12_27
アジア・太平洋戦争は、日本人を国家総動員体制のもと、等しく戦争に協力することが求められていた。しかし現実には、社会全体を巻き込む災禍や暴力においてでさえ、人々が等しく協力しているわけではないし、負担を負っているわけでもない。そうした不平等の実態を知るための一つの方法として、社会調査データの分析がある。過去の社会調査データを分析することで、アジア・太平洋戦争時の不平等の実態を、ある程度明らかにすることができる。そこで実際に分析してみてわかることは主に二つある。第一に戦争は格差を消失させるわけではないということである。戦前社会は高格差社会であった。戦時中においてもそうした格差は一部維持されていた。第二に戦争はあらたな格差をつくりだすということである。戦時中に負担を強いられた人々は、戦後も苦しい生活を強いられていた。戦争によってもたらされる負担は、戦時中のみならず、戦後も継続しており、それは特定の社会階層に偏っていたのである。