学術の動向
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いま「戦争」を考える ─社会学・社会福祉学の視座から─
「戦後の終わり」にどう向き合うか
石原 俊
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キーワード: 戦後, 帝国, 占領, 冷戦, 北東アジア
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2022 年 27 巻 12 号 p. 12_46-12_49

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抄録

(1)ウクライナ侵攻から北東アジアへ

(2)冷戦の当事者としての日本

(3)「戦後の終わり」に向き合うために

 北東アジア地域は現在も、世界のなかで際立って、継続する冷戦状況に強く規定されている。だが日本本土は、敗戦の過程から冷戦期にかけて、軍事的な前線や拠点を、沖縄を含む北西太平洋の島々や朝鮮半島・台湾に負担させてきた。本土の人びとの間では、冷戦の当事者意識が希薄なまま、「戦後」意識が形成された。20世紀末に自衛隊海外派遣が始まって約30年経つが、派兵当事者としての意識も日本社会には一向に広がらない。

 台湾海峡や朝鮮半島で次の本格的な戦争が始まったとき、日本の「戦後」も否応なく終わる。帝国日本が敗戦過程で事実上の踏み台にした南洋群島や硫黄島や沖縄諸島のような地上戦が本土で行われた場合、いかなる結果が生じたかについて、そして日本帝国からの「解放」直後に臨戦態勢が始まり、約40年も独裁政権下に置かれた韓国や台湾の状況について、あるいはイラクや南スーダンで自衛隊員が置かれた死と隣り合わせの状況について、本土社会の想像力はあまりに乏しかった。人びとの戦争・軍事に対するリテラシーを高めるには、敗戦過程から現在に至る日本社会の戦争・軍事との関係を、徹底的に直視することが必要だろう。

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