学術の動向
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カーボンニュートラル実現に向けた学術の挑戦
カーボンニュートラルに貢献する土地利用と農林業政策の最適化とは?
北島 薫
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2023 年 28 巻 1 号 p. 1_58-1_62

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抄録

 森林の中でも熱帯林は、人間活動に起因する大気中の二酸化炭素増加を緩和する機能に秀でる。IPCC第6次アセスメントの複数の報告書において、この機能は高い確信度をもって再認識される一方、その将来性には大きな不確実性が伴う、と指摘される。不確実性の要因は、農地転換や火災による森林減少であり、その結果として陸域生態系の炭素吸収機能、気候緩和機能、土壌保持・水供給機能などの劣化が起こる。また、急峻な地形や貧栄養土壌の上に成立する自然林を伐採してできた農地や放牧地の生産性は非持続的で、ほとんど短期利用の後に放棄され、森林生態系の再生も難しい荒地となってしまう。森林再生手段として、単一樹種植林地は炭素吸収機能の一部を回復することに貢献できても、生物多様性にとっては負の影響を与える恐れもある。よって、カーボンニュートラルの実現には、食料システム改革を核とし、適所適材を実現する持続的土地政策が鍵となろう。

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