学術の動向
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カーボンニュートラル実現に向けた学術の挑戦
カーボンニュートラル社会のための部門別の技術開発の機会と政策対応
田中 加奈子
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2023 年 28 巻 1 号 p. 1_52-1_57

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抄録

 カーボンニュートラル社会構築のために炭素削減技術と社会実装のためのシステムやインフラ、制度が重要である。日本の部門別炭素排出量からは化学・鉄鋼・運輸のクリーン燃料利用や電化、電力の脱炭素化が重要であることがわかる。IPCC報告書が提示する要因からのGHG削減機会の整理を用い、部門別対策が明確化する。産業革命以降の気温上昇を1.5℃以下に抑えるためは2030年までに少なくとも世界でこれまでの3倍の年間投資が必要であり、そのために十分な資本と流動性がある(IPCC)。セクターを超えた取り組みはすでに10年以上日本のみならず世界全体で進んでいる。日本の政策は技術分野に重点をおき、経済発展との好循環を目指すものであること、そしてトランジション(移行)に焦点が当たっている。今後は、カーボンニュートラルだけではない長期的な将来社会への移行に機会を見いだすことが肝要であり、そのための学術研究の果たす役割は大きい。

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