イギリスにおいて女性議員が増加した過程では、二大政党である労働党と保守党が政権を奪還するという政党としての至上命題を成し遂げるために、代表性と包摂性、応答性を高めることを目的として、候補者選定過程の改革を行った。具体的には、労働党では「女性指定選挙区」という革新的な政党クオータ制、保守党では党本部が作成する「優先リスト」やプライマリー方式などが導入され、どちらの事例においても、党執行部の候補者選定過程に対する統制と影響力が強化されたと言える。他方で、クオータ制の導入に関しては、二つの政党の間でアプローチの違いが観察される。本稿では、こうしたイギリスでの候補者選定過程改革の事例を概観し、女性の記述的代表の量的拡大への含意を検討する。