2023 年 28 巻 2 号 p. 2_75-2_78
パンデミック危機の過程で、政治学の分野では「パンデミック政治」と公衆衛生の政策論が注目された。新興大国のブラジル、ロシア、中国、インドはどう対応したか。米欧諸国と対立や緊張を抱えるロシアや中国は独自の政策を進め、国威をかけたワクチンの開発と生産を行い、「ワクチン外交」を繰り広げた。インドも自国製ワクチンを開発・生産し、アストラゼネカの生産拠点ともなり、ロ中と米欧日に分裂する世界における国益の増大をめざした。ユーラシアの三国の動向は、多くの途上国とともに、遠いラテンアメリカのブラジルにも深い影響を与えた。グローバリゼーション時代の「複合的危機」に襲われた国々で、国際主義や民主主義が動揺する。南アフリカも独自の問題を抱えているものの、他のBRICS諸国はイリベラル・デモクラシーや独裁に傾斜し、権力移行をめざす大国化の道を歩んでいる。危機の時代に、パンデミック後の「知」と新しい構想が求められている。