学術の動向
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感染症をめぐる 国際政治のジレンマ ─科学的アジェンダと政治的アジェンダの交錯─
COVID-19ワクチンをめぐる公衆衛生と知的財産権保護の相克
──国際政治経済論の観点から
古城 佳子
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2023 年 28 巻 2 号 p. 2_71-2_74

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抄録

 新型コロナ(COVID-19)感染の制御に不可欠なワクチンの配布をめぐり、公衆衛生と知的財産権の保護という二つの「地球公共財」の相克が問題となった。この問題は、既にHIV/AIDSの事例で問題となり、WTOのTRIPS協定をめぐり議論が起こり、公衆衛生を優先する規定が定められた。しかし、医薬品の配布について、二つの「地球公共財」のどちらを優先するかという点に関し、ステークホルダー間の見解は分かれたままであった。COVID-19ワクチンに関しては、WTOで特許権の一時的な停止が2022年に合意されたが、ワクチン製造企業や国が少数であることに起因するR&D企業とジェネリック薬企業との競争、ワクチン製造国によるワクチン外交の誘因、米中対立における技術移転の懸念などの国際政治経済的要因がステークホルダー間の協力を難しくしている。

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